毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2023.8.04
「マイ・エレメント」
火、水、土、風の元素(エレメント)たちが暮らす街。家族思いだがカッとなりやすい火の女の子、エンバー(声=リア・ルイス)は、父が営む店の後継ぎになろうと努力していた。ある日、彼女が出会ったのは、涙もろくて穏やかな水の青年、ウェイド(同ママドゥ・アティエ)。自分とは正反対の彼との交流をきっかけに、エンバーは自分の可能性について考え始める。
ディズニー&ピクサーの新作を手がけたのは、韓国からの移民を両親に持つピーター・ソーン監督。異なるルーツを持つキャラクターたちが住むエリアはそれぞれに特徴があり、現実の世界がわかりやすく反映されている。若い世代が違いを乗り越えて手を携えることで未来が切り開かれていくという、多様性の必要さを訴えかけるメッセージも至極シンプルだ。
エレメントの性質を生かした、ユニークな描写もたっぷり。エンバーが自分の炎で気球を飛ばしたり、ガラスを溶かしてアート作品のようにリメークしたり、考え抜かれたシーンの数々にワクワクさせられた。1時間41分。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・大阪ステーションシティシネマほか。(細)
ここに注目
炎のエンバーも水のウェイドも、そして他の登場人物もほとんどが不定形。常に形が変わり続ける彼らを、表情豊かに生き生きと動かすアニメーションにびっくり。狭い隙間(すきま)に入り込んだり水たまりやたき火と一体化したりとアイデアも楽しい。単純なお話を絵の豊かさで盛りあげた。(勝)