「映画を愛する君へ」

「映画を愛する君へ」©2024 CG Cinéma Scala Films Arte France Cinéma Hill Valle

2025.1.31

「映画を愛する君へ」 デプレシャン監督が語る自らの人生と映画への愛

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

日本でも多くのファンを持つフランスのアルノー・デプレシャン監督によるシネエッセーである。ドキュメンタリーとフィクションのパートを自由に混在させ、自らの人生の歩みと映画への愛情を語る自伝的作品だ。

劇中には草創期から現代までの50本以上の映画が引用されるが、そのセレクトが面白い。ヒッチコック、ドライヤーといった巨匠の古典や「ダイ・ハード」「ノッティングヒルの恋人」などの娯楽映画が同等に扱われる。魅惑的な光に満ちた創作のパートには、デプレシャンの分身である「そして僕は恋をする」の主人公ポールが登場。6歳の時に祖母に連れられて初めて映画館で見た「ファントマ 危機脱出」、14歳の時に年齢を偽ってチケットを買った「叫びとささやき」などの思い出がノスタルジックに映像化される。奔放な構成ゆえに一見とりとめのないように映るが、本作が一貫して探求するのは「なぜ私たちは映画を見るのか?」という素朴で根源的な主題。今もその問いと向き合うデプレシャンの映画への尽きせぬ情熱が伝わってくる。1時間28分。東京・新宿シネマカリテ、大阪・テアトル梅田ほか全国で順次公開。(諭)

ここに注目

古くはトリュフォーの「アメリカの夜」、最近もモレッティの「チネチッタで会いましょう」など、映画を描く作品はいくつもある。本作の核心は「ショア」に焦点を当てた、デプレシャン監督の強い意志だろう。映画(館)愛を超えて、映画の現代性と語り部としての決意を見た。(鈴)


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