「波紋」 ©2022 映画「波紋」フィルムパートナーズ

「波紋」 ©2022 映画「波紋」フィルムパートナーズ

2023.5.26

「波紋」

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

依子(筒井真理子)はスーパーで働きながら新興宗教を信仰し、1人で穏やかに暮らしていた。ある日、11年前に父親の介護を依子に押しつけたまま失踪した夫(光石研)が突然帰ってくる。がんになり治療費を援助してほしいという。さらに、就職して家を出た息子の拓哉(磯村勇斗)が、障害のある恋人を結婚相手だと連れてくる。

東日本大震災や介護、障害者差別、新興宗教といった問題に向き合いつつ、1人の平凡な女性の生きざまをユーモアを交えて映し出した。依子は責任感も倫理観もあり「こうあらねば」と生きてきたタイプ。不満ながらも夫の面倒を見るし、息子を思うあまりその恋人に悪意もさらけだす。夫が家を出てから心のよりどころは宗教だった。自立した女性からほど遠いが、ありがちな世の女性の姿といっていいだろう。インチキまがいの宗教でも、依子にとってはすがり信じるものであり、日々の救いになっていった。荻上直子監督はラスト、平場で生きづらさを抱えて生活する等身大の女性たちに少しの解放感をもたらし、新たな一歩を促すのだ。2時間。TOHOシネマズ日比谷、TOHOシネマズ梅田ほか。(鈴)

異論あり

夫に義父と共に置き去りにされた依子を、被害者として描かないところがいい。時に意地悪く、そして実は自己中心的。夫や息子の婚約者ら周囲の人物と合わせ、一筋縄でいかない人間の心の内に分け入る手つきが鮮やか。一方で、震災や新興宗教、障害者に家族の確執と詰め込み、いささか窮屈な感も。(勝)

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