「1秒先の彼」 ©2023『1秒先の彼』製作委員会

「1秒先の彼」 ©2023『1秒先の彼』製作委員会

2023.7.07

「1秒先の彼」

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

小さな頃から何をするにも人よりも1秒早い郵便局員のハジメ(岡田将生)。路上ミュージシャンの桜子(福室莉音)と花火大会でのデートの約束をしたものの、目覚めると翌日になっていた。不思議な出来事の秘密を握っているのは、毎日郵便局にやって来る、何事も人より1秒遅い大学7回生のレイカ(清原果耶)だった。

台湾映画「1秒先の彼女」を監督・山下敦弘、脚本・宮藤官九郎のタッグでリメーク。男女を反転させるという仕掛けを施しているが、オリジナルと同様にいちずさを純愛と捉えるか、独りよがりな行動と見るかで、鑑賞後の印象が違ってくるかもしれない。レトロなインテリアの愛らしさは本作でも健在。そこに加えて、ノスタルジックな映像との相性がいい京都の風景が、最後まで目を楽しませてくれる。せっかちな二枚目を演じて残念な風を吹かせる岡田と、おっとりと芯の強さを感じさせる清原はそれぞれの持ち味を生かして好演。バスの運転手など、脇のキャラクターの描写にクドカン節が光る。1時間59分。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(細)

ここに注目

山下監督とクドカン脚本、笑いが持ち味の2人だが、そのツボはいささか異なる。皇一(すめらぎはじめ)と、長宗我部麗華(ちょうそかべれいか)という主人公2人の名前の仕掛けなどはクドカン流、時間が止まった街並みの描写の間合いなどは山下映画。うまい具合に融合し、台湾版と筋立ては同じながら、違った風合いに。(勝)