「大きな家」

「大きな家」©CHOCOLATE

2024.12.06

特選掘り出し!:「大きな家」 施設の子らの心の奥へ

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

東京都内のある児童養護施設で暮らす子どもたちや、施設を卒園して学生や社会人として生きる若者たちを丹念に追ったドキュメンタリー映画。俳優の斎藤工がプロデュースしている。

竹林亮監督は低い視点からのカメラワークで、一人一人の生活に密着し、彼らの言葉や生き様を映し出す。親との死別や親の病気、経済的事情、虐待など、さまざまな理由から施設で暮らす子どもたち。仲間同士で騒いだり、笑顔で施設を案内したりする姿は明るく見えるが、彼らにじっくり話を聞くと、心の奥がにじみ出てくる。

多くの子どもたちは、施設で共に暮らす仲間や職員との関係を<家族とは違う>と表現する。家族はあくまで別の所にいる。その思いが切なくて、見る者の胸を刺す。仲間や職員にきついことを言う子もいる。けれど、彼らにはわがままを言ったり、反抗期のいらだちをぶつけたりする親が身近にいないのだ。職員はその気持ちを分かって、じっと受け止める。

施設を卒園した若者たちの生活もカメラは追う。終盤、新しい人生を踏み出した若者が語る施設や仲間への思いは、施設で暮らす子どもたちの言葉とは少し違う。その間には確かな成長があり、静かな希望がある。2時間3分。東京・渋谷パルコWHITE CINE QUINTO、大阪・TOHOシネマズ梅田など全国で順次公開。(光)

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