「Playground/校庭」

「Playground/校庭」©2021 Dragons Films/ Lunanime

2025.3.14

「Playground/校庭」 校庭から描く集団生活の断面図

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

小学校に入学した7歳のノラ(マヤ・バンダービーク)。人見知りの彼女は、なかなか居場所を見つけることができずにいる。同じクラスの女の子ふたりと仲良くなるが、三つ上の兄、アベル(ガンター・デュレ)がいじめられているところを目撃。大好きな兄を助けたいと思うが、アベルは誰にも言うなと命じてくるのだった。

小さな子供が家族のもとから離れ、学校というコミュニティーに初めて足を踏み入れる。その瞬間の怖さや緊張感、高揚感を、ドキュメンタリータッチの映像で描き出した1時間12分の作品。音楽はなく、学校にあふれる音を生かした作りによって、この小さな社会こそが世界の全部だった頃の感覚が生々しくよみがえる。あくまでも子供の目の高さでとらえた映画ではあるが、集団生活のひとつの断面図とも言えるかもしれない。

監督はローラ・ワンデル。登場人物の繊細な揺らぎを肌感や温度とともに伝える作風は、同じくベルギー出身の名匠、ダルデンヌ兄弟の作風を思わせ、次回どんな作品を見せてくれるのか楽しみになる新鋭だ。東京・新宿シネマカリテ、大阪・テアトル梅田ほかで公開中。(細)

ここに注目

ノラの視点や心の揺れもさることながら、校庭で遊ぶ不特定多数の子供たちのざわざわした様子、喧騒(けんそう)の中の声がもう一つの主役。悲しみやおびえ、アイデンティティーさえものみこんで感覚をまひさせ、承認欲求を増幅させる。恐怖による支配で人は目や耳、口を閉ざす。校庭から現代を射抜いた。(鈴)

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