毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2024.4.26
「青春18×2 君へと続く道」 浮かび上がらせる郷愁と後悔
18年前の台湾。日本人バックパッカーのアミ(清原果耶)は、高校3年のジミー(シュー・グァンハン)のアルバイト先であるカラオケ店で働き始める。アミは店の人気者となり、ジミーは恋心を抱きデートもする仲になる。しかし、アミは突然帰国すると言いだし、2人はある約束をして別れた。18年後、36歳になったジミーは、自身が作りあげたゲーム制作会社から追い出され、アミの面影を求めて日本を旅する。
台湾での初々しい恋のかけひきと、鎌倉、津南、奥只見などを訪れるジミーの旅を交互に配して、ジミーのアミへの思慕を紡いでいく。2人乗りしたバイクで夜道を疾走するシーン、願いを込めて空に放つランタンの幻想的な映像が情感を高める。アミとの大切な時間、仕事に熱中した日々の記憶は、観客の内にある郷愁と後悔を浮かび上がらせる。旅の展開はベタでも、人はなぜ旅をするのかという問いにつながるセリフの数々にも心をつかまれる。道枝駿佑、黒木華らが脇に回りいい味を出している。藤井道人監督。2時間3分。5月3日から東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(鈴)
ここに注目
出演者もスタッフもロケ地も、日本と台湾がほどよくミックス。しっとりとした情感の盛り付けもそつがなく、青春の忘れ物を回収する旅というロードムービーに気持ちよく泣ける。アジアで人気の映画「Love Letter」(岩井俊二監督)を効果的に使って、日台の人気俳優の魅力も引き出した。(勝)