「アンダーカレント」 ©️豊田徹也/講談社 ©️2023「アンダーカレント」製作委員会

「アンダーカレント」 ©️豊田徹也/講談社 ©️2023「アンダーカレント」製作委員会

2023.10.06

「アンダーカレント」 人間という存在の曖昧さ、不可解さを探求

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

亡き父から引き継いだ銭湯を営むかなえ(真木よう子)が、友人から紹介された探偵(リリー・フランキー)に、原因不明の失踪を遂げた夫・悟(永山瑛太)の調査を依頼する。そんなかなえの銭湯では、堀(井浦新)という寡黙な男が住み込みで働き始めていた。やがてかなえは堀との日常に安らぎを感じるが、彼女も知らなかった悟の意外な事実が明らかになる。

原作は2005年に出版された豊田徹也の同名漫画。少女時代のトラウマにさいなまれる主人公かなえをはじめ、主要登場人物は皆、どこかうつろな風情で、心の底流(アンダーカレント)に秘密を抱える。序盤、探偵がかなえに問いかける「人を分かるってどういうことですか?」というセリフがまさに本作のテーマ。人間という存在の曖昧さ、不可解さを探求した野心作だが、テンポの緩さ、余白の多さゆえに映画そのものがぼんやりしてしまった感も。その半面、いくらでも劇的に仕立てられそうな物語や感情の起伏を抑制した今泉力哉監督の語り口、キャストのたたずまいには映画的な魅惑が宿っている。2時間23分。東京・新宿バルト9、大阪・T・ジョイ梅田ほか。(諭)

ここに注目

愛情、疑念、うそ、沈黙、封印したはずの記憶といった、心の表層と深層を浮かび上がらせる真木らの演技、懐かしさと美しさが同居する映像、寄り添うような細野晴臣の音楽のバランスがとてもいい。原作にない結末は、自分の近くにいる誰かとのつながりを想起させてくれるような優しい余韻を残す。(坂)

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