「大いなる不在」 解き放たれていく謎と現実
卓(森山未來)は幼い自分と母を捨てた元大学教授の父陽二(藤竜也)が警察に捕まったと連絡を受ける。久しぶりに父を訪ねると、陽二は認知症で別人のように変わり果てていた。陽二と長年生活していた再婚相手の直美(原日出子)の行方も分からなくなっていた。卓と妻夕希(真木よう子)は、陽二の知人や、家に残っていた大量のメモと手紙を頼りに、父と義母の人生をたどり始める。 ずっしりと内臓、いや体中に染み込むような作品、とでもいうべきか。陽二と直美の人生の奥深くに、卓や夕希を媒介として触れていく感覚だ。しかも、少しずつ皮をはぐように、その謎と現実を解き放していくような作りにも魅了された。認知症は大きな要素ではある...