「オオカミの家」©Diluvio & Globo Rojo Films, 2018.

「オオカミの家」©Diluvio & Globo Rojo Films, 2018.

2023.12.29

〝思いもよらぬ世界〟を満喫 これぞ映画! 勝田友巳

2023年も、たくさんの映画や配信作品が公開されました。とても見切れなかった!とうれしい悲鳴も聞こえてきそうです。「ひとシネマ」執筆陣が今年の10本と、来る24年の期待作3本を選びました。年末年始の鑑賞ガイドとしてもご利用ください。

勝田友巳

勝田友巳

ゆく年編


「オオカミの家」(クリストバル・レオン、ホアキン・コシーニャ監督)
「栗の森のものがたり」(グレゴル・ボジッチ監督)
「愛にイナズマ」(石井裕也監督)
「ほつれる」(加藤拓也監督)
「女優は泣かない」(有働佳史監督)
「バカ塗りの娘」(鶴岡慧子監督)
「福田村事件」(森達也監督)
「せかいのおきく」(阪本順治監督)
「ミッション:インポッシブル デッドレコニングPART ONE」(クリストファー・マッカリー監督)
「君たちはどう生きるか」(宮崎駿監督)
 

新鋭の感性が刺激的

思いもよらないところに連れて行ってくれたり挑発してきたりする映画に、魅力を感じた2023年だった。邦洋の大作は見ている間中、ずっとワクワクし通し。映画の楽しみを満喫させてくれた。
 
そしてきら星のごとき小品たち。「栗の森のものがたり」は、美しいものを見たと感激。どのカットも中世の絵画のようにすみずみまで手をかけられていて、しかも喪失の悲しみがありユーモアがあり、社会への批判もにじむ。乱暴かつ大胆な「オオカミの家」と並んで美術品のよう。
 
日本映画は、新鋭の繊細な感覚に驚き。言葉も表情も少ないのに、微妙な感情の動きと関係性をありありと示した「ほつれる」、職人かたぎと親子の情を新人と思えぬ落ち着いた手つきでかたどった「バカ塗りの娘」、負け犬の逆転劇は定型的でも、巧みな人物造形が新鮮だった「女優は泣かない」。次も期待してます。
 
社会と向き合った「福田村事件」、石井裕也監督の覚悟を感じた重量級の「月」と鏡あわせのような「愛にイナズマ」。映画に臭いがなくて良かった「せかいのおきく」。ほんとは加えたかった「逆転のトライアングル」や「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」「シック・オブ・マイセルフ」「理想郷」「PERFECT DAYS」「怪物」……。きりがないです。
 
 

くる年編

 
「哀れなるものたち」 1月26日公開
「夜明けのすべて」 2月9日公開
「FEAST 狂宴」 3月1日公開
 


監督追っかけ 欧、日、アジア

最近は監督の名前で映画を選ぶ、という人が少なくなっているとか。監督原理主義でもないし、いつも最高傑作を更新してくれるわけではないけれど、こと映画に関しては〝追っかけ〟気質。ヨルゴス・ランティモス、三宅唱、ブリランテ・メンドーサと、ギリシャ、日本、フィリピンと地域を変えて3人選んだ。楽しみ。

ライター
勝田友巳

勝田友巳

かつた・ともみ ひとシネマ編集長、毎日新聞学芸部専門記者。1965年生まれ。90年毎日新聞入社。学芸部で映画を担当し、毎日新聞で「シネマの週末」「映画のミカタ」、週刊エコノミストで「アートな時間」などを執筆。