映画「痛くない死に方」の一場面=©「痛くない死に方」製作委員会

映画「痛くない死に方」の一場面=©「痛くない死に方」製作委員会

2021.2.18

時代の目:痛くない死に方 最後の生を全うするため

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)。

「死に方」の映画である。避けては通れない人生の終末。つらいが、最後の生を全うするための患者と医師、家族を描き、「生き方」の映画にもなっている。

智美(坂井真紀)は末期のがん患者の父に、自宅での「痛くない在宅医療」を選択するが、苦しみ続けて死んでしまう。在宅医の河田(柄本佑)は自責の念を感じ、先輩の長野(奥田瑛二)に相談する。診断ミスを指摘され、長野の元で在宅医療を学んでいく。

前半の河田は痛い在宅医、後半は痛くない在宅医に変わる。教科書的に違いを見せて分かりやすい。河田の成長物語でもある。前半は患者の苦しみをリアルに映し、残酷で厳しい。後半の患者の本多(宇崎竜童)は逆に理想的だ。妻(大谷直子)との関係もほほえましい。2人が一瞬見せる表情に、歩んできた人生と愛情がにじむ。本多の作る川柳が重々しさを拭い、内面をユーモラスに映し出す。

涙や感動に傾かず、淡々と事実を重ね時を刻む演出にベテラン俳優が応えた。妻が台所のシンクをひたすら洗う場面など脚本の巧みさもしみる。在宅医療への理解とドラマ性のさじ加減は心憎いほどだ。高橋伴明監督。1時間52分。東京・シネスイッチ銀座、大阪・テアトル梅田(3月5日から)ほか。(鈴)

新着記事