かい さやか
映画監督、脚本家「徒花-ADABANA-」(2024年)
東京国際映画祭で安藤裕康チェアマンにインタビューした時 、 記憶に残った言葉がある。2024年8月9日に発効した日伊映画共同製作協定を眺める彼の感慨。「協定の前にもさまざまな努力があった」という。それはそうだろう。日本で初めて「文化外交」の概念を持ち出した のは 彼であり、外交現場での最後の職責が駐イタリア特命全権大使だった。 文化史イベントとしての合作協定 映画の共同製作のために国家間で協定まで結ぶ必要があるのかと考える読者がいるかもしれないが、隣の韓国も07年に欧州連合(EU)およびフランス、08年にはニュージーランド、そして14年には中国と共同製作協定を締結している。韓国が...
洪相鉉
2024.12.27
新次(井浦新)は妻と一人娘の3人で暮らしていたが、重い病にむしばまれ、ある病院で療養するものの終末期を迎えようとしていた。手術を前に、臨床心理士、まほろ(水原希子)の提案で過去の記憶を呼び戻すが、不安はぬぐえない。裕福な人間だけに身代わりとして提供される、「それ」と呼ばれる自分と同じ見た目だが知的なクローンと対面する。 「赤い雪 Red Snow」で注目された甲斐さやかの監督2作目。死を目前にした人の精神のさまよいとクローンという近未来の産物を同居させ、自身が生きてきた道程や生きることとは何かへの思索を促す。クローンの存在を、命や人間存在を考える一つの材料として提示した。人間の怖さやいとおし...
2024.10.18
「赤い雪 Red Snow」(2019年)で長編監督デビューし、第14回JAJFF(Los Angeles Japan Film Festival)最優秀作品賞を受賞した甲斐さやか監督の5年ぶりとなる待望の長編第二作。主人公の新次を演じるのは、井浦新。臨床心理士のまほろ役をモデルや俳優で活躍する水原希子、謎めいた「海の女」役で「ドライブ・マイ・カー」(21年)の三浦透子、新次の母親役として斉藤由貴、さらに、「箱男」(24年)の永瀬正敏が出演する。 理想的な家庭を築くも、死のおそれもある病気に冒された新次(井浦新)は、とある病院で療養している。手術を前に新次は、臨床心理士のまほろ(水原希子)か...