この1本:「ブルータリスト」 夢の暗部、移民の受難
来る3月3日(日本時間)の米アカデミー賞授賞式を控え、今週から来週にかけて有力作が次々と公開される。ホロコーストを生き延び、戦後に渡米したハンガリー系ユダヤ人男性が主人公の本作は、30代の青年監督ブラディ・コーベットの長編第3作。作品賞、監督賞など10部門にノミネートされた3時間35分の一大叙事詩である。 妻エルジェーベト(フェリシティ・ジョーンズ)と生き別れたままアメリカの地を踏んだラースロー・トート(エイドリアン・ブロディ)は才能ある建築家だが、文化の違う異国では誰も彼の名声など知らない。戦時中のトラウマと孤独にあえぐトートは、ホームレス同然に落ちぶれ、薬物に手を染める。そんなとき実業家...