この1本:「花腐し」 漂う退廃の心地よさ
物語の舞台は平成だが、漂うのは昭和の香り、というより〝臭い〟というべきか。1人の女をめぐる2人のダメ男の、10年に及ぶ関係を描く。松浦寿輝の同名小説が原作だ。 2012年、ピンク映画監督の栩谷(くたに)(綾野剛)は、同せいしていた恋人で女優の祥子(さとうほなみ)が栩谷の友人と心中し、理由が分からぬまま取り残された。5年も映画を撮っていない栩谷は大家から、取り壊し予定のアパートに居座っている伊関(柄本佑)を追い出せと頼まれる。脚本家志望だった伊関は訪ねてきた栩谷を部屋に引き入れ、初めての恋人の話を始めた。初対面の2人だったが、2人が思い出しているのは同じ祥子のことだった。 映画は、会話する2...