Maryam Moghadam
監督「白い牛のバラッド」(2020年)
第74回ベルリン国際映画祭(2月15~25日)は、最高賞の金熊賞にドキュメンタリー「ダホメ」(マティ・ディオップ監督)を選んで閉幕した。コンペティション部門20本の中には、突出した作品こそ見当たらなかったものの、世界各地からの多様な「声」が並んでいた。「政治的」と形容されてきたベルリンは、各地で紛争が続き分断と対立が深まる中で対話を促し、授賞結果はその象徴に見えた。 ウクライナ、ガザ地区……混迷映し 映画祭は開幕前からざわついていた。ドイツ国内では政府のイスラエル支援に反対の声が上がり、政党関係者を招くことが慣例となっていた開会式に、排外主義的な右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)...
勝田友巳
2024.2.26
死刑制度通じイランの政治体制問う イランはいい映画の多い国です。ちょっと並べても、「別離」や「セールスマン」のアスガー・ファルハディ、あるいは「チャドルと生きる」「オフサイド・ガールズ」のジャファル・パナヒなど、世界映画をリードする監督ばかり。傑出しているのは「桜桃の味」のアッバス・キアロスタミ監督ですが、キアロスタミの死後もイラン映画、健在です。 宗教戒律が厳格に適用される国ですから映画に加えられる制約も厳しく、企画、撮影、公開というすべてのステップでダメ出しがされてしまう。自由な映画表現とはほど遠い状況ですが、うれしいことに、そんなことで映画をやめる人たちじゃありません。映画撮...
藤原帰一
2022.2.21
イランのテヘランで暮らすミナは、1年前に夫を殺人罪で死刑に処せられた女性。牛乳工場で働き、口のきけない幼い娘を育てる彼女が、裁判所で衝撃的な事実を告げられる。夫は殺人を犯しておらず、真犯人は別人だったというのだ。やがて担当判事の謝罪を求めて裁判所に通うミナの前に、夫の友人と称するレザという中年男が現れる。 冤罪(えんざい)を題材にしたサスペンス映画である。夫を亡くした悲しみに暮れるミナは、公式に過ちを認めようとしない裁判所の対応に納得できず、夫と死別したゆえに社会の古い慣習や価値観にも苦しめられる。共同監督を務めたベタシュ・サナイハ、マリヤム・モガッダム(主演を兼任)は、ミナと謎めいた男レザ...
2022.2.17
テヘランに1人で住む70歳のマヒンは、孤独な生活を変えもう一度恋をしようと決意する。孤独なタクシー運転手と出会って家に連れて帰り、意気投合するものの、幸せな時間は長く続かなかった。「白い牛のバラッド」のマリヤム・モガッダム、ベタシュ・サナイハが監督。 第74回ベルリン国際映画祭で国際批評家連盟賞などを受賞。
夫が殺人罪で死刑になり、ろうあの娘をひとりで育てるミナ。処刑から1年後、夫が無実で、処刑が誤りだったと告げられる。納得できないミナは賠償よりも謝罪を求めるが空回りするばかり。そんな時、夫の友人というレザが現れ、ミナを親身になって手助けする。レザにはミナに隠している秘密があった。