ふじたつや
1941年8月26日 生まれ
俳優「愛のコリーダ」「それいけ!ゲートボールさくら組」
「大いなる不在」で藤竜也が演じているのは、認知症ですべてを忘れ変貌していく元大学教授だ。といっても、そこに現れるのは人間性を失う認知症の悲劇より、忘却してもなお残る人間の本性だ。「人間はね、みんな煩悩に苦しむんですよ」。さらりと言うのである。 脚本を読んで「スッと理解した」と振り返る。「年齢的に陽二と近いし、身につまされるっていいますか、非常に分かりやすくつかまえられた」。演じる人物の履歴書を作るなど入念な準備をすることもあるが、今回は「特に何もしなかったです。プロファイリングも、役をつかむためにやるわけだから」。「サクラサク」(2014年)でも認知症の男性を演じ、この時調べたことが今回も役...
勝田友巳
2024.7.20
卓(森山未來)は幼い自分と母を捨てた元大学教授の父陽二(藤竜也)が警察に捕まったと連絡を受ける。久しぶりに父を訪ねると、陽二は認知症で別人のように変わり果てていた。陽二と長年生活していた再婚相手の直美(原日出子)の行方も分からなくなっていた。卓と妻夕希(真木よう子)は、陽二の知人や、家に残っていた大量のメモと手紙を頼りに、父と義母の人生をたどり始める。 ずっしりと内臓、いや体中に染み込むような作品、とでもいうべきか。陽二と直美の人生の奥深くに、卓や夕希を媒介として触れていく感覚だ。しかも、少しずつ皮をはぐように、その謎と現実を解き放していくような作りにも魅了された。認知症は大きな要素ではある...
2024.7.12
第78回毎日映画コンクール2次(最終)選考の候補作、候補者が決まった。 2月14日に表彰式 めぐろパーシモンホール 毎日映コンは、「作品」「俳優」「スタッフ」「ドキュメンタリー」「アニメーション」の5部門で17賞。「作品」「俳優」「スタッフ」は、映画評論家や映画記者約70人の1次選考委員が投票を行い、上位得票作・者が2次選考候補となる。「アニメーション」「ドキュメンタリー」両部門は、応募作から1次選考委員による討議で候補作を決定。2次選考では、各部門の選考委員の討議で決まる。「外国映画ベストワン賞」は、1次選考委員による再投票で決定する。 受賞結果は2024年1月下旬に発表、表彰式は...
ひとシネマ編集部
2023.12.20
撮影を担当した、孫ほど年の離れた記者に「かっこいい……」とつぶやかせてしまう、藤竜也。気負いもてらいもなくたたずんで、世間の二枚目のイメージは「錯覚ですよ」と受け流す。誠実に丁寧に役に取り組む姿勢は、大作でもインディー作品でも変わらない。かっこよさの理由は、その自然体にありそうだ。 「一生懸命やって、その積み重ね」 主演した新作のコメディー映画「それいけ!ゲートボールさくら組」では、ゲートボールに挑戦する元高校ラガーマンを演じている。役の設定は76歳、実年齢はさらに上。「いま、81歳らしいんですよ、8月で2になる。その数字は結構プレッシャーですよね。エレベーターに乗っても邪魔...
2023.5.05
中学生のいじめっ子のガキ大将、デブナガがやくざに誘拐され、デブナガにいじめられていたジョジョ、ブルース、辞書の3人が救出すべく後を追う。途中で出会ったヤクザの権兵とともに、3人は奇妙な旅を続けることになる。オーディションで選ばれた永瀬正敏、河合美智子のデビュー作。ヤクザに振り回される中学生たちのハチャメチャな冒険を鮮烈に描く。
長編デビュー作「コンプリシティ/優しい共犯」(2018年)が、トロント、ベルリン、釜山などの名だたる国際映画祭に正式招待された近浦啓監督の2作目。森山未來と藤竜也が親子役で初共演する。第48回トロント国際映画祭プラットフォーム部門で、ワールドプレミア上映。 撮影:山崎裕 ©︎2023 CREATPS
「村の写真集」(2004年)、「しあわせのかおり」(2008年)に続く藤竜也と三原光尋監督の3度目のタッグとなる本作。スクリーンデビューから60 周年を迎えた藤竜也が、尾道で長きにわたり豆腐店を営み、街の仲間達から愛される主人公・高野辰雄(たかの・たつお)を味わい深く演じる。その辰雄の娘・春(はる)役は、藤の主演作「猫の息子」(1997年)への出演以来、26 年ぶりの共演となる麻生久美子が演じる。 尾道の町の一角に店を構える高野豆腐店(たかのとうふてん)。夜が明ける前に、そっと明かりが灯り、愚直で職人気質な父、高野辰雄(藤竜也)と、明るく気立てのいい娘、春(麻生久美子)の一日が始まる。地道に...
1936年に起きた「阿部定事件」を大島渚監督が映画化。料亭に住み込みで働く定が、店の主人吉蔵と恋仲になり、情事を重ねる。やがて関係が吉蔵の妻に知られ、2人は駆け落ち、あてのない逃避行はやがて行き詰まり、定は吉蔵を殺し、性器を切断した。撮影で俳優に性交させる演出で日本で撮影、フィルムをフランスに運び出して現像、編集した。究極の愛を描いた作品はカンヌ国際映画祭で上映されて高く評価されたが、わいせつか芸術かを巡る論争となり、シナリオ本がわいせつ物とされて裁判となるなど(最高裁で無罪確定)、大きな注目を集めた。 1976年の日本公開時には一部がカットされて公開。2000年、この部分を復元し「愛のコリ...