第28回プチョン国際映画祭のマスタークラスで、誕生ケーキを贈られて指ハートで答える三谷幸喜監督=2024年7月7日、勝田友巳撮影

第28回プチョン国際映画祭のマスタークラスで、誕生ケーキを贈られて指ハートで答える三谷幸喜監督=2024年7月7日、勝田友巳撮影

2024.7.07

ツカミとオチは韓国語 サプライズに大喜び 三谷幸喜監督 プチョン国際ファンタスティック映画祭

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勝田友巳

勝田友巳

韓国で開催中の「第28回プチョン国際ファンタスティック映画祭」で三谷幸喜監督作品の特集上映が組まれ、7日、「記憶にございません!」の上映と三谷監督によるマスタークラスが開かれた。登壇した三谷監督は「アンニョンハセヨ、ネハングゴアラッソヨ(こんにちは、私の韓国語分かりますか)」とあいさつ、マスタークラスは大受けでスタートした。

韓国未公開も含め3作

三谷監督の作品は韓国でも「ラヂオの時間」などが公開され、人気は高い。今回の特集上映では「ステキな金縛り」と韓国では未公開の「ギャラクシー街道」「記憶にございません!」の3本が上映された。

三谷監督は「同じあいさつを、ベルリンやロシアやニューヨークで、現地の言葉でやったが、ここが一番受けた」と報告、再び拍手。「記憶にございません!」の着想について「朝起きたら自分が総理大臣になっていたらどうするか想像した。そんなことはあり得ないけれど、総理大臣が記憶を失って目を覚ますというのも同じことだと思いついた」と明かした。

「ギャラクシー街道」日本で不評でも「プチョンのために作った!」

「ギャラクシー街道」の上映は「驚いた」という。「というのも、自分で面白いと思って作ったのに、日本では一番評判が悪く、お客さんも入らなかったから。ここで上映したいと言ってもらえたので、この映画祭のために作ったのではないかと思っている」と笑わせた。三谷作品を貫く笑いについては「自分が人を笑わせるのが好きだと気づいたのは、小学校のクリスマス会で15分ぐらいの劇を書いて主演してから。次第に自分で演じるより、裏に回って人に演じてもらう方が受けると気づいた。それで脚本家、演出家になった」と振り返った。

日本での公開が控える新作「スオミの話をしよう」についても話が及んだ。「ミステリーコメディーなのであまり話せないが」と前置き。「自分は家族と仕事仲間と、全然違う顔を見せている。家族と会っているときに仕事の人が来ると、どうしていいか分からなくて困った。このシチュエーションは映画になると思った」と話した。また「舞台と同じ形で映画を作ってみたいと思い、ワンシチュエーション、長回しのセリフ劇を芝居の上手な俳優で作った。1カ月近いリハーサルをして、演劇的な映画になっている」と内容をチラリ。

人間はウソをつく。コメディーの基本

会場からは「映画作りでこだわっていることは」との質問が寄せられた。「人間はウソをつく生き物。自分は今真面目な話をしているけれど、実はおなかがすいたと悟られないようにしている。これもある意味ウソ。考えていることと話していることが違うものだし、それがコメディーの基本だ」と熱心に答えていた。

最後に司会者が「あしたは監督の誕生日なので、ケーキを用意した」とサプライズ。三谷監督の似顔絵をあしらったケーキを贈られ、会場からは韓国語の「ハッピーバースデー」の大合唱。三谷監督は「日本でもファンと映画について語ることはあまりない。熱意が伝わったし、感動した」とあいさつ。そして「今の思いを一つの言葉にするならこれです、『ペゴパ!(おなかがすいた)』」。見事なオチをつけてしめくくった。

終了後には会場の外でサイン会。長い行列ができたが、1人ずつ丁寧にサインをしていた。

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ライター
勝田友巳

勝田友巳

かつた・ともみ ひとシネマ編集長、毎日新聞学芸部専門記者。1965年生まれ。90年毎日新聞入社。学芸部で映画を担当し、毎日新聞で「シネマの週末」「映画のミカタ」、週刊エコノミストで「アートな時間」などを執筆。

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