インタビューに答える駐日EU代表部の政治・広報部、武部浩子さん

インタビューに答える駐日EU代表部の政治・広報部、武部浩子さん

2023.6.05

「EUフィルムデーズ2023」全27カ国の映画を一堂に! 加盟候補国ウクライナ作品も 駐日EU代表部の政治・広報部、武部浩子さんに聞く

公開映画情報を中心に、映画評、トピックスやキャンペーン、試写会情報などを紹介します。

鈴木隆

鈴木隆

欧州連合(EU)加盟全27カ国の最新の秀作、話題作を集めた「EUフィルムデーズ2023」が、東京・京橋の国立映画アーカイブで開催中だ。今回のコンセプトは「映画でつながる、ヨーロッパ」。ヨーロッパ各国の映画が一堂に会した貴重な特集上映は、今年で20周年。駐日EU代表部の政治・広報部、武部浩子さんにこれまでの歩みや今回の見どころ、今後の展望などを語ってもらった。


 各大使館の熱意が背景に

「EUフィルムデーズ」の最大の特徴は、EU加盟の大半の国の映画を見ることができることだ。2003年のスタート時は、各国の文化会館や大使館などで開催。09年からは現在の国立映画アーカイブ(旧フィルムセンター)で続けられている。「ここ10年くらいは20カ国以上が参加し、昨年と今年は加盟全27カ国がそろった」。EU加盟の在日大使館・文化機関が毎年、作品を提供してきた。発端は、ヨーロッパとして共同の文化イベントをしようという話が持ち上がり「映画に関心がない国はなく、(文化的にも)幅がある映画祭は文化の普及、関心の広がりに最適。その国がどんな問題に直面しているかが分かりやすく伝わり、フィクションでも作り方に国柄が出る」。

ただ、実際には全ての加盟国が作品をそろえるのは至難の業。「自国以外の国で上映するには字幕を付ける必要があるし、権利関係をクリアしないといけない。各大使館の手作りイベント的な部分がある。大きな文化部や映像の専門家がいる国もあれば、外交官が公務の一部として映画を選んで借りてくるケースもあり簡単ではない。自国の映画を見てもらうことへの熱意が根本にある」。EU代表部が字幕や権利処理をサポートすることもあるという。
 

移民や多様な生き方、テーマも多彩

作品の選定は各国大使館が提案し、提案を聞いて代表部がカテゴリーを決める。今回も家族や越境、女性などキーワードを踏まえて30作品を七つのカテゴリーに分け、選びやすくして観客に提示している。「ヨーロッパの映画は重要なテーマがいくつかあって、移民の問題、障害者、多様な人々の生き方などを描いた作品が集まりことが多く、EUにも日本にとってもかかわりの深い作品が目立つ」と話す。

「カテゴリー分けも、コロナ禍でオンライン開催になった2020年に行ったら好評だったので続いている。それ以前はチラシなども国名の50音順だった。映画の形もアニメやドキュメンタリー、シリアスなドラマなど多彩であえて統一はしていない」。ここ数年の傾向として、移民の問題を挙げた。「ヨーロッパだけでなく世界共通の問題。日本でも注目されているテーマであり、現在の各国の事情が伝わってくる。ハリウッド的なスカッとするような映画は少ないかもしれません」と語る。

 ウクライナ作品で連帯

今回はウクライナの作品が「ルクセンブルク、ルクセンブルク」など2本入っているのも大きな特徴だ。ウクライナは加盟候補国で、正式な加盟国以外の作品が上映されるのは初めて。「侵略を受けているウクライナにEUとして連帯を示し、応援したいという意味合いもある。EU代表部として、これまでにウクライナ支援のチャリティーコンサートなども開催しており、本部側で日本で上映されていない(上映の動きのない)ウクライナ作品を選んでもらった」。


また、全30作品中、今回も近年に日本国内で公開されたり、映画祭などで上映されたりして評判の高かった「イニシェリン島の精霊」や「シチリアーノ 裏切りの美学」など11本の作品が含まれている。「映画祭や一般公開されたが、配給がついておらず、見逃した方やもっと多くの人に見てもらいたいとの各国個別の事情も考慮している」。
 
国の大小や温度差もあり全27カ国の作品をそろえるのは容易なことではない。武部さんによると「EU各国の文化担当が月に1回、定例の会合を開いて文化イベント開催の協議や情報交換をしている。EUフィルムデーズは定着しており、毎年年末かその前から話し合いや選定をはじめるが、権利関係など時間がかかることも多々ある」というのだ。少し前までは今後の配信と映画館での上映、最近では経費的な観点から日本語字幕を本国で行う国もあり、字数制限や字幕サイズの課題なども話し合われているようだ。さらに、日本語だけでなく英語字幕が入った作品の上映には「その他の国の人や、日本在住の外国人の関心も高まっていて、英語圏以外の国の映画の英語字幕も半数前後に増えている傾向」という。

 

若者、女性、外国人の観客が増加

今回で20周年の節目を迎えたが、今後はどういう方向に進むのか。今年は東京、京都、広島、福岡で開催するが「もっと会場を増やして、より多くの人に見てもらいたい。札幌や沖縄など全国で実施できるとうれしい」と上映会場の拡大を模索する。全加盟国の参加が2年続いたが「昨年初めてマルタの作品が入った。マルタとキプロスの大使館ができたのはここ数年のこと。いずれにしても、日本にいる各国大使館の人の熱意と横のつながりがこの映画祭を支えている」と感謝を述べる。
 
上映に足を運ぶ観客にも変化があるという。国立映画アーカイブなどの話によると「普段の上映と異なるタイプの方も来場している。若い人や女性、外国人が増えているのもうれしい」と笑みを浮かべる。「EU各国の文化に触れることのできる貴重な機会であり、各国のえりすぐりの映画を多くの方に楽しんで親交や交流を深めていただきたい」と話した。
 
開催時期と場所は、東京・国立映画アーカイブ(~6月30日)、京都府京都文化博物館(6月20日から7月23日)、広島市映像文化ライブラリー(7月21日から8月5日)、福岡市総合図書館(8月9日から27日)。

関連記事

ライター
鈴木隆

鈴木隆

すずき・たかし 元毎日新聞記者。1957年神奈川県生まれ。書店勤務、雑誌記者、経済紙記者を経て毎日新聞入社。千葉支局、中部本社経済部などの後、学芸部で映画を担当。著書に俳優、原田美枝子さんの聞き書き「俳優 原田美枝子ー映画に生きて生かされて」。

カメラマン
田辺麻衣子

田辺麻衣子

たなべ・まいこ 2001年九州産業大学芸術学部写真学科卒業後スタジオカメラマンとして勤務。04年に独立し、06年猫のいるフォトサロンPINK BUTTERFLYを立ち上げる。企業、個人などさまざまな撮影を行いながら縁をつなぐことをモットーに活動中。

新着記事