©︎2023「アナログ」製作委員会 ©︎T.N GON Co., Ltd.

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2023.10.23

悲劇を真っ向から受けて戦っていく二宮和也さんの芝居を見て泣いてしまいました「アナログ」脚本家:港岳彦

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ひとしねま

ひとシネマ編集部

現在、泣ける!と大ヒット公開中の「アナログ」(毎日新聞社など製作委員会)の脚本家・港岳彦さんのインタビューを劇場用パンフレットから一部抜粋して掲載します。



――原作の印象から教えて下さい。
 
「その男、凶暴につき」(北野武監督・1989)を見て、僕の人生は間違いなく変わりました。生(なま)の暴力を初めて日本で示した映画だと思うし、あの映画にものすごい衝撃を受けてこの世界に入ることを決めたんです。それ以来、生き方や物の見方など、僕が人生で一番影響を受け続けた人、それが北野武さんであり、ビートたけしさんです。そんなたけしさんの原作の映画ですから、タカハタ監督からお話をいただいた時は「絶対やりたいです!」とお受けしました。
 
――港さんとして挑戦だったなと思う点もありますか?
 
そもそも純愛作品を書くことが初めてだったので、すべてが挑戦でした。男女の関係もないような大人の純愛をどう表現すべきかについてはとても悩みましたし、悟というキャラクタ―は、本当にそこに存在している感じを出す塩梅が非常に難しい。それが成立したのはやっぱり悟を演じるのが二宮(和也)さんだったからなんです。僕は「硫黄島からの手紙」(2006)を観た時、この人天才だと思ったんですよね。いかつい男たちばかりの戦場で、振る舞いも佇まいも非常に自然体で、どこにでもいそうな青年として存在してみせた。だからまず演者としての信頼がすごくあった。二宮さんには永遠の少年性のようなものがあるし、僕自身当て書きは得意じゃないんですが(*今回二宮だけは当て書き)、最初から最後まで悟=二宮さんで執筆できたことで、ずっと安心していました。その後に波瑠さんがみゆきをやってくれると聞いて、ベストカップルだなと思いました。みゆきも相当難しい役ですが、波瑠さんには圧倒的な説得力があるし、何より2人がそった時の佇(たたず)まいが素晴らしいなと。
 
――後半の展開を描くうえで意識されたことは?
 
前半がロマンスという意味で余白の世界なんですが、後半は端的に言うと悲劇。悲劇は隙間なく合理的に畳みかけることが脚本の基本です。前半を溜めに溜めて書いたぶん、後半できつい場面が続くのは自分で書いているので分かってはいましたが……完成作を見て泣いてしまいました。なぜなら二宮さんが、その悲劇を真っ向から受けて戦っていく芝居をされていたから。
 
――悟と母親の関係性も〝たけしイズム〟を感じる素敵な要素だと思いました。
 
母親の死は悟にとって人生が変わるくらいの大きな出来事で、それに対して桐谷健太さん演じる高木がとる行動……我が事のような痛みを抱えつつみゆきに会いに行って、悟の母の死を伝える。それを悟には伝えないという行動にも、北野映画のような美学を感じます。みゆきも「お母さんが亡くなったんですね」とは一言も言わず、海に行こうと誘う。お互い何があったかは分かっていながら抱き合うんですが、あそこのハグに恋愛要素は1ミリもないんですよね。あれはたけしさんにしか書けないです。
 
劇場用パンフレットより一部抜粋
インタビュアー:遠藤薫
 
プロフィール:
脚本 港 岳彦
1974年3月5日生まれ、宮崎県出身。脚本家。主な映画作品に「イサク」(09)、「結び目」(10)、「百年の時計」(12)、「ナイトピープル」(13)、「蜜のあわれ」(16)、「夏美のホタル」(16)、「あゝ、荒野 前篇/後篇」(17)、「宮本から君へ」(19)、「MOTHER マザー」(20)、「とんび」(22)、「正欲」(23)など。テレビドラマ作品にWOWOWオリジナルドラマ「前科者 -新米保護司・阿川佳代-」(21)などがある。

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