©2022映画「島守の塔」製作委員会

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PR 毎日新聞社/ポニーキャニオンエンタープライズ

2022.7.19

戦争は、そこにある。Z世代が今こそ〝見るべき〟映画「島守の塔」

青山 波月

青山 波月

平成に生まれ、戦争を知ることなく生きてきた私は、自ら戦争映画を見ることはあまりない。戦争という事実があったことを頭ではわかっているが、現代の自分の生活においてあまりにも非現実的に感じるからだ。けれど昨今、異国での戦争が身近に迫ってきており、私はこの作品を通して「戦争について少しでも知ることができたなら」程度に思って足を運んだ。
 
しかしこの作品を見ている間、私は見るのではなく、リアルに戦争を体験した。
鑑賞後の私はすぐ現実に戻れず、恐怖と悲しみ、命と感動、そして今の人生の素晴らしさが頭の中をぐるぐる回り、まるでアトラクション酔いしたような感覚におちいった。衝撃的な出来事だった。


 

命は差し出す―― 戦時中に植え付けられた価値観

命は宝。なんとしてでも生きぬけ。と、声を大にして国民に訴えた人間は、戦時中に何人いたのだろうか。
 
今回紹介する「島守の塔」は、自分の命を守る。寿命を全うするまで生きる。そんな、現代では当たり前のことが当たり前じゃなかった時代を生きた人々を描いた作品だ。
 
沖縄市糸満市の摩文仁の丘 平和祈念公園内にある島守の塔。
そこには、戦没県職員469柱を祀(まつ)る慰霊塔がある。ここに名を連ねるのは、この作品の主人公である、沖縄県知事の島田叡と警察部長の荒井退造の二人。
それぞれの職務を全うし、軍と対立しながらも、県民を守るという使命を最後まで果たした二人だ。彼らは現代まで語り継がれ続け、この映画によってさらなる後世にも語り継がれる存在となるだろう。
 
沖縄戦に尽力した人物は数多くいるだろうが、その中でもこの二人がモデルとして描かれた理由は、命の重さに対する考えがまひしていたこの時代に「命どぅ宝」、命は宝だと訴え続け住民の命を何よりも尊重することに尽力したからだ。
 
自分がもしこの時代に生きていたら、誰になんと言われようと自決なんてしないし、戦争のために命をささげて戦おうなんて考えない。きっと現代ならほとんどの人がそう思うだろう。
 
しかし、住民保護とは相反する戦意高揚の方法をとる軍の政策が、現代でも行われていたら社会はどうなるだろうか。当時雑誌や新聞で訴えかけられる言葉の数々がSNSで同じように拡散されたら、有名人がYouTubeで戦意高揚へと向かわせる発言をしたら、私たちは絶対命を差し出さないと断言できるだろうか。
 
そんな集団洗脳のような環境で島田と荒井は、軍からの圧力に屈することなく、住民からの理解を得られなくても、「命どぅ宝」を叫び続けた。
 
五十嵐匠監督は「もしウクライナに島田知事がいたら、どうしていたか」と、試写会で述べていた。その答えは、ここまで私の文章を読んでいただければ明白だろう。なんとしてでも、一人でも多くの住民の命の尊重に尽力するに違いない。

 

たまには「見るべき>見たい」が映画の醍醐味

平成に生まれ、戦争を知ることなく生きてきた私たちZ世代。戦争を経験した人々が、その体験を語るたびに「後世にも伝えてほしい。この出来事を忘れないでほしい」と口にする。その度に私たちは当時の残酷な写真や映像を目に焼きつけ、絶対に忘れてはいけないと胸に刻んでいくが、私たちが目を向けなければいけないのは過去のことだけではないのだ。今現在も世界で起こっている戦争に目を向けられているか? 私たちが今後伝えていく側にならなければいけないことをわかっているか? 私たちはこの先どう考えどう行動していくのか? この作品と監督の言葉から切実に思ったことである。
 
そして、何よりも命の大切さ、今の生活のありがたさを実感した。
子供っぽい言い方だけれど、〝ごめんなさい〟と〝ありがとう〟が頭の中を駆け巡った。戦争をきちんと知ろうとしなくてごめんなさい。そしてなぜか〝老害〟とか〝親ガチャ〟とかいう言葉がはやってごめんなさい、とも思った。一方で、戦争がない日本にしてくれてありがとう、今の生活にありがとう、すべての人々にありがとうという心境で胸がいっぱいになった。
 
実際の戦争を知る人々が少なくなってきた今、またいつこのような戦争のリアルが織り込まれた映画が生まれるか分からない。もしかしたらこの作品が最後になるかもしれない。
このような映画が若者受けしないことは十分承知しているが、たまには「見たい映画」ではなく、「見なければいけない映画」もしくは「体験すべき映画」に触れることも、映画を楽しむ醍醐味(だいごみ)ではないだろうか。

公式
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島守の塔

県民の4人に1人、約20万人が犠牲となった「沖縄戦」。「命(ぬち)どぅ宝、生きぬけ!」と叫んだ 2人の官僚と、「沖縄戦」に翻弄される沖縄県民。それぞれの苦悩と生きることへの奮闘を描き、沖縄本土復帰50周年の節目に「命の尊さ」を次世代に継承する映画が誕生しました。

ライター
青山 波月

青山 波月

あおやま・ なつ 2001年9月4日埼玉県生まれ。立教大学現代心理学部映像身体学科3年在学中。
埼玉県立芸術総合高等学校舞台芸術科を卒業後、現在は大学で映画・演劇・舞踊などを通して心理に及ぼす芸術表現について学んでいる。
高校3年〜大学1年の間、フジテレビ「ワイドナショー」に10代代表のコメンテーター「ワイドナティーン」として出演。
21年7月よりガールズユニット「Merci Merci」として活動開始。
好きな映画作品は「溺れるナイフ」(山戸結希監督)「春の雪』(行定勲監督)「トワイライト~初恋~」(キャサリン・ハードウィック監督)
特技は、韓国語、日本舞踊、17年間続けているクラシックバレエ。
趣味はゾンビ映画観賞、韓国ドラマ観賞。