第74回ベルリン国際映画祭で「箱男」上映翌日、取材に応じた、(左から)浅野忠信、永瀬正敏、佐藤浩市、石井岳龍監督=2024年2月18日、勝田友巳撮影

第74回ベルリン国際映画祭で「箱男」上映翌日、取材に応じた、(左から)浅野忠信、永瀬正敏、佐藤浩市、石井岳龍監督=2024年2月18日、勝田友巳撮影

2024.2.18

「箱男」上映に永瀬正敏「映画の神様に思い通じた。感慨深すぎ」 第74回ベルリン国際映画祭

第74回ベルリン国際映画祭は、2月15~25日に開催。日本映画も数多く上映されます。戦火に囲まれた欧州で、近年ますます政治的色合いを強めているベルリンからの話題を、現地からお届けします。

勝田友巳

勝田友巳

第74回ベルリン国際映画祭でワールドプレミア上映された「箱男」。深夜に及んだ上映から一夜明けた18日、石井岳龍監督、出演した永瀬正敏、佐藤浩市、浅野忠信が日本人記者の取材に応じた。
 

佐藤浩市「深いもの持って帰ったのでは」

17日の上映は午後10時半に始まり、質疑応答が終わったのが18日午前1時過ぎ。石井監督は「もっとゆっくり話したかった。それでも面白かったと言ってくれた人には女性が多く、安心した」と手応えを感じた様子。佐藤は「異国の地での上映で、どう見られるか、普段より雰囲気を敏感に見た。〝見る〟ことについて深いものを持って帰ったのではないかと思う」。永瀬は「初めて観客に見てもらい、感慨が深すぎた」、浅野も「きっとドイツにもないタイプの映画。自由な作品が増えればいい」と口々に感想を語った。
 
「箱男」は石井監督が原作者の安部公房から託されて映画化を進め、27年前には製作が決定したものの、クランクイン前日に撮影が中止になっている。「都市に暮らす現代人が、いかに妄想の世界に閉じ籠もっているかを重層的に描いている。現代ではスマートフォンに閉じ籠もり、安部公房の描いたことがはっきり見えた。この時代に作るべくして作る映画になった」と話した。
 

「映画とは何か」

佐藤と永瀬は当時も出演する予定だった。佐藤は「当時よりも見方が広がって、作品の軸も増えたのでは。映画製作は縁で、中止になっても後でできることもあり、その時でなくて良かったのかもしれない」。永瀬は「監督はその後も、諦めないからねと言い続けていた。その思いが映画の神様に通じたのだと思う。実現に立ち会えたのは幸せだった」と感慨深げ。石井監督は「題材に引きつけられてやまなかったし、映画とは何かという問いへの回答にもなった。今回の最終形態は時代、俳優、スタッフと作品が合致して実現した」と強調した。
 
石井監督の「ユメノ銀河」「パンク侍、斬られて候」などに出演してきた浅野は、「箱男」では新加入。「毎回現場は男の子が冒険している、遊びをもっと楽しくと追求するような撮影。今回も楽しみました」
 
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ライター
勝田友巳

勝田友巳

かつた・ともみ ひとシネマ編集長、毎日新聞学芸部専門記者。1965年生まれ。90年毎日新聞入社。学芸部で映画を担当し、毎日新聞で「シネマの週末」「映画のミカタ」、週刊エコノミストで「アートな時間」などを執筆。

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