「ラーゲリより愛を込めて」 ©2022 映画「ラーゲリより愛を込めて」製作委員会 ©1989清水香子

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2022.12.18

Z世代が見た「ラーゲリより愛を込めて」 生きる意味とは?

公開映画情報を中心に、映画評、トピックスやキャンペーン、試写会情報などを紹介します。

青山 波月

青山 波月

生きる意味とは。
誰もが一度は考えたことがあるだろう。

今回紹介する映画「ラーゲリより愛を込めて」は、第二次世界大戦終戦後、シベリアの強制収容所で過酷な生活を送った日本人抑留者の実話を元にした物語。

死んだ方がマシだ。
そう思わざるを得ない過酷な環境で、それでも必死に生きることを唱え続けた山本幡男と、山本を取り囲む抑留者、そして日本で山本の帰りを待ち続けた妻・モジミをはじめとする家族の姿を描いた作品だ。

第二次世界大戦終戦後、戦争を生き抜いた人々は大陸から全員が日本に帰れたわけではない。
極寒シベリアの収容所〈ラーゲリ〉に、身に覚えのない罪で収容された人たち。
やっとの思いで戦争を生き抜いた者たちも、この収容所で続々と命を落としていった。

零下40度の極寒の世界、過酷な肉体労働、僅かな食料、ロシア兵からの理不尽な暴力、抑留者内での旧軍隊の身分をそのまま当てはめた格差対立。
観(み)ている私まで精神がすり減らされるような出来事の数々。

その中でも、私が一番心をえぐられた出来事は、山本の満鉄時代の先輩・原幸彦が山本を裏切る場面だ。
山本を含む幾人かの者は、最初の収容所からダモイ(帰国)途中の列車で突如降ろされた。
このまま日本へ帰る予定だった人たちを、身に覚えのないスパイ容疑などの罪にでっち上げて、ラーゲリに収容するためだ。
ここで、山本の情報をロシアに売ったのが、かつて山本が慕っていた原だった。

彼の変わり果てた姿に絶望する山本。
しかし、山本は制限ある収容所生活の中で彼が得意とする野球をやろうと、監視の目を盗んでボールを作り仲間を集めた。
彼が生きる希望を見いだすことを諦めなかった山本。
私だったら、愛する家族の元へせっかく帰れるチャンスを奪った彼のことを絶対許せないだろう。
だが、山本は自分が生きる希望、そして仲間が生きる希望を持つことを諦めなかった。
そんな山本の姿に私は心を打たれた。

仲間の亡きがらを捨てることを命じられる。
日本から来たはがきで愛する家族の死を知らされる。
もう生きている意味なんてあるのか、死んだ方がマシなのではないか。
観ている私でさえ、そう思ってしまうような展開の中、山本だけは最後まで生きる意味を唱え続けた。
その山本の信念は、すさみきった抑留者たちの心を次第に変えていくことができた。
抑留同室の松田研三は、山本の姿から、どうせ死ぬなら大義を持って生きて死にたい、と強く訴えた。

しかし、皮肉にもそんな山本に次第に死の影が迫ってくることになる。
山本の死を悟った原は日本にいる愛する家族への遺書を書くことを強く勧めるのだった。

この作品の企画プロデューサーの平野隆さんのコメントにこんな言葉があった。
「この映画はいわゆる“戦争映画“ではありません。人間賛歌の映画であり、愛の物語です。出口の見えない閉塞(へいそく)感の真っ只(ただ)中にある2022年、傷つき、苦しみ、希望を見いだせなくなった方々に是非観てもらいたい、心からそう思います」

新型コロナ感染拡大。ロシアのウクライナ侵攻。
社会が混沌(こんとん)とし、息苦しさを感じるこの世の中で、生きる希望、生きる意味が分からなくなってしまうこともあると思う。
実際、私たちZ世代は、この混乱の渦の中で将来にどのような希望を見いだして生きていけばいいのか悩んでしまう時がある。
戦争映画とは過去に起きた惨事をもう繰り返さないために、後世に受け継いでいく役目があると思う。
しかし、この映画は平野さんの言う通り、ただの戦争映画ではない。リアルタイムで生きづらさを感じている人の救いになるような映画だ。

生きる意味とは。

誰もが現代に抱えるこの鬱々とした思いが、どうかこの映画で少しでも救われますように。

ラーゲリより愛を込めて

第二次世界大戦後の1945年。そこは零下40度の厳冬の世界・シベリア…。わずかな食料での過酷な労働が続く日々。死に逝く者が続出する地獄の強制収容所(ラーゲリ)に、その男・山本幡男は居た。「生きる希望を捨ててはいけません。帰国(ダモイ)の日は必ずやって来ます。」絶望する抑留者たちに、山本は訴え続けた―
山本はどんな劣悪な環境にあっても分け隔てなく皆を励ました。そんな彼の仲間想いの行動と信念は、凍っていた日本人捕虜たちの心を次第に溶かしていく。山本はいかなる時も日本にいる妻や4人の子どもと一緒に過ごす日々が訪れることを信じていた。
終戦から8年が経ち、山本に妻からの葉書が届く。厳しい検閲をくぐり抜けたその葉書には「あなたの帰りを待っています」と。たった一人で子どもたちを育てている妻を想い、山本は涙を流さずにはいられなかった。誰もがダモイの日が近づいていると感じていたが、その頃には、彼の体は病魔に侵されてい

ライター
青山 波月

青山 波月

あおやま・ なつ 2001年9月4日埼玉県生まれ。立教大学現代心理学部映像身体学科3年在学中。
埼玉県立芸術総合高等学校舞台芸術科を卒業後、現在は大学で映画・演劇・舞踊などを通して心理に及ぼす芸術表現について学んでいる。
高校3年〜大学1年の間、フジテレビ「ワイドナショー」に10代代表のコメンテーター「ワイドナティーン」として出演。
21年7月よりガールズユニット「Merci Merci」として活動開始。
好きな映画作品は「溺れるナイフ」(山戸結希監督)「春の雪』(行定勲監督)「トワイライト~初恋~」(キャサリン・ハードウィック監督)
特技は、韓国語、日本舞踊、17年間続けているクラシックバレエ。
趣味はゾンビ映画観賞、韓国ドラマ観賞。