誰になんと言われようと、好きなものは好き。作品、俳優、監督、スタッフ……。ファン、オタクを自認する執筆陣が、映画にまつわる「わたしの推し」と「ワタシのこと」を、熱量高くつづります。
「少年と犬」©2025映画「少年と犬」製作委員会
2025.3.20
心を闇から光へと導いていく愛らしい表情の犬「少年と犬」多聞の素顔とは?
大好きな少年と会うために5年で3000キロ、東北から熊本まで旅をした犬とその旅の途中で出会う人々の物語「少年と犬」(毎日新聞社など製作委員会)が全国で公開されている。ジャーマンシェパードの気高い様相の多聞。出会った人々の声を名前の通り「多く聞き」、心を闇から光へと導いていく愛らしい表情が映画をけん引している。そんな多聞の素顔とは? そう、さくらという撮影時は10歳のベテラン犬だった。ドッグトレーナーの石井敏樹さんと飼い主の鈴木美貴子さんに撮影当時を振り返ってもらった。
代役なしで臨んだ撮影
石井:多聞を演じた「さくら」さんは、まさに名犬。キャストもスタッフもみなさん絶賛しています。「さくら」さんなくして映画「少年と犬」はあり得なかったと思います。
鈴木: 飼い主の私から言うのは恥ずかしいんですけど、彼女は訓練が好きなんですよね。いろいろなことを前向きに学んでくれる子なので。これまでは主に警察犬役で、ドラマ、映画 、 CM、YouTubeなどに15本ほど出演しています。今回の撮影期間は2カ月。初めて長期でお仕事させていただきました。
石井:飼い主さんも学ぼうとされていましたよね。撮影を想定したレッスンに積極的に参加してくださった。飼い主さんの姿勢があって初めてできた映画だと思います。
鈴木:代役がいなかったので、けがと病気にはすごく気をつけていました。健康管理に関しては、今までのお仕事とは違いましたね。春、主に屋外の撮影で、寒いときもあれば暑いときもある。温度管理も大変でした。彼女はもうシニアなんです。撮影時は10歳。大型犬の10歳は初老なので、体力の回復には時間がかかる。マッサージに通ったりもしました。週に4、5日は撮影していましたから。
賢く忠誠心が強い犬種
──さくらさんの表情には本当に驚かされます。
石井:さくらはやっぱり飼い主さんのことが大好きなんですよ。目線の先に飼い主さんにいてもらったり、あえて離れてもらったり。そうなると切ない表情になる。個人的にさくらがすごいなと思ったのが車の中のシーン。ただそこにいるだけに見えますが、あれは難しい。動く車の中で固定の目線をキープするのは難易度が高い。目をつぶらせるより、車の中の方が難しい。よくがんばってくれたなと思います。あれだけ、じっとしてるのはすごい。音が完全に遮断されているのに、あれだけ集中してくれたんですから。
──シェパードはやはり賢い犬種なのでしょうか。
石井:賢い種類ですね。なおかつ忠誠心が強い。多聞には向いている犬種です。
鈴木:さくらは(私が飼った)シェパードとしては2頭目です。1頭目も集中力、あと忍耐力が強かった。トレーニングしていて楽しいんです。 (犬の方が)飼い主を上回ることもあるので、飼い主も成長しなければいけません(笑)。飼い主がいつの間にか(犬に)飼われちゃわないように。
さくらも楽しみにしていた撮影
──さくらさんの個性は?
石井:やはり、飼い主が大好きだということですね。それだけに撮影前は心配でした。でも高橋(文哉)さんや西野(七瀬)さんがこまめに接してくれて、(撮影以外の)空き時間にも遊んでくれたりしていたので、撮影は支障なくできました。
鈴木:みなさんのおかげです。さくらも撮影に行くのを楽しみにしてました。2か月あるので、さすがに1日くらいは撮影に行くのが嫌だという日もあるのかなと思っていましたが、毎回毎回(撮影現場に向かうときは) 「はーい」と車に乗ってくれました。ああ、楽しみにしてるんだなと。
8月生まれなのに「さくら」という名の理由
──犬のどういうところが好きですか。
鈴木:心がつながれるところ。ときどき母になってくれたり、ときどき妹になってくれたりする家族。友だちにもなる。大切な相棒。ずっと犬と暮らしていきたいと思っています。
石井:人間からは得られない癒やし、優しさ。いろいろな感情を見いだしてくれる存在ですね。言葉以外の何かで表現しないと伝わらない。相手も同じことを思っていますよね。それができたときの喜びがあります。
──ところで、なぜ「さくら」という名前にしたのですか。
鈴木:実は、さくらは8月生まれ。春生まれじゃないんです。先代のシェパードが桜の満開の日に亡くなったんですよ。動物病院から車に乗せて帰る途中、いつも通っていた桜並木を見ながら「もし、次にシェパードを迎えることがあったら、『さくら』にしよう」と決めていました。
石井敏樹(いしい・としき)
多数のペットモデルが在籍する「アニマルプロ」で、2017年の設立時からスタッフを務める。ドラマ「ナンバMG5」(22)、「王様に捧ぐ薬指」(23)、「風間公親-教場0-」(23)、映画「犬鳴村」(20)、 「女子高生に殺されたい」(22) などでドッグトレーナーを担当。そのほか多数の広告(CM、GR)にも参加。
鈴木美貴子(すずき・みきこ)
さくらと共に参加した作品は、 ドラマ「雨に消えた向日葵」(22)、「風間公親-教場0-」(23) 、映画「犬鳴村」(20)、 「女子高生に殺されたい」(22)など。 そのほか多数の再現ドラマやCM、「川口春奈オフィシャル はーちゃんねる」などにも出演。