出版社が映画化したい!と妄想している原作本を担当者が紹介。近い将来、この作品が映画化されるかも。
皆様ぜひとも映画好きの先買い読書をお楽しみください。
2023.6.26
「声なき声」をすくい上げる警察ヒロインを描く「警察庁特捜地域潜入班・鳴瀬清花」シリーズ
異色のチームメートとともに、全国各地の謎に「潜入」せよ!
……全国各地の未解決事件の謎を潜入調査する、特殊チームが存在するらしい。それも、改造したオンボロキャンピングカーを移動基地に、全国を飛び回っているんだとか。ウワサじゃ、クセの強いヤツばかりの部署らしい——。
怪しげな、でもどこか愉快な香りのする謎の組織。そんなチームの活躍を目撃できるのが、「警察庁特捜地域潜入班・鳴瀬清花」シリーズです。「ホラー」「ヒロイン」「警察」「民俗学」「特捜チーム」と要素モリモリで、映画化にもぴったりな本シリーズの魅力をご紹介します!
主人公は「すべてを失った」キャリア女性刑事
物語はキャリアに全力を投じる神奈川県警捜査一課の刑事・木下清花が、勾留中の被疑者を自死させてしまうところから始まります。高圧的な取り調べをしたと責任を問われた清花は捜査一課を追われ、さらには警察事務職員として働く夫からも離婚を言い出されてしまい……。職場にも家庭にも居場所を失った清花に、かつての上官・返町は残された道として、新設組織「警察庁特命捜査係・地域潜入班」への出向を提案します。あからさまな左遷に闘志を燃え上がらせた清花は、潜入班への出向を決意しますが……。
「猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」シリーズ、「東京駅おもてうら交番・堀北恵平」シリーズと、これまで新人女性警察官の活躍を中心に描いてきた著者の内藤了さんですが、今回の主人公はバリバリのキャリア刑事。娘を持つ清花は、潜入班への配属後も「刑事」と「母親」の二足の草鞋(わらじ)を履いて奮闘します。「働く女性の苦悩が凝縮している」というような感想も寄せられる、まさに現代人が抱える問題をテーマにした物語です。
個性豊かなキャラクターと「地域」への潜入が面白い!
と、少し重たい雰囲気のスタートと思いきや、清花を迎え入れる潜入班は愉快なメンバーそろい! 自ら所有していたポンコツキャンピングカーを潜入班の可動式拠点に改造した班長・土井火斗志、自称指示待ち刑事の祭り男・丸山勇、キレると「ヤマンバ」状態になる後方支援室通信官・万羽福子。クセ強メンバーによる一見ハチャメチャな活動に驚きあきれる清花ですが、徐々にその魅力に惹(ひ)かれ溶け込み、彼女自身も成長していきます。
また、日本中をめぐる「旅小説」としても魅力的な本作。1作目『FIND』では栃木、2作目『LIVE』では青森へ、捜査に向かいます。その土地ならではの特産物を食べたり、温泉に入ったり、人の優しさに触れたり……。
もちろん、恐ろしい事件の捜査シーンも見もの。『FIND』では「児童連続神隠し事件」、『LIVE』では旧家の火災現場から発見された14体の花嫁人形の謎に迫ります(怖い!)。子供たちや事件の被害者、地域社会に生きる人々の、「声なき声」をすくい上げるために奔走する清花たち。その活躍は、映画館のスクリーンで抜群に映えること間違いなしです。シリーズ第3巻以降も鋭意準備中。ぜひぜひご注目ください!