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2025.1.16
ピョン・ウソクら2024年にブレーク&存在感を示した韓ドラ俳優4人を振り返り!
韓国ドラマで昨年、存在感を示した俳優たちを振り返りたい。もちろん、昨年活躍した俳優たちが数多くいるのは重々承知のうえで、ここでは4人の俳優を取り上げる。
「ソンジェ 背負って走れ」より © CJ ENM Studios Co., Ltd. U-NEXTで配信中
「ソンジェ背負って走れ」ピョン・ウソク&キム・へユン
4月から5月にかけて韓国で放送され、日本ではU-NEXTで配信されている本作は、今年最も話題となったドラマの一つ。事故で下半身付随となったソル(キム・へユン)が、人生を救ってくれた人気バンドのボーカル、ソンジェ(ピョン・ウソク)の死を防ごうと奔走する姿を描く。見どころは、ソンジェを助けるためのソルのタイムリープの物語と、2人のもどかしい恋の行方が交差して進むところ。
クールな見た目とは違って恋には不器用なソンジェと、明るく天真爛漫(らんまん)だが待ち受ける未来に複雑な気持ちを抱えるソル。運命的な2人の甘酸っぱい恋模様は瞬く間に話題になり、今年を代表する青春ラブストーリーとなった。ブレークの証拠にピョン・ウソクは、韓国で多数のCM出演を果たし、有名企業のアンバサダーを務めることに。筆者も9月に韓国を訪れた際には街でピョン・ウソクが起用された広告を見かけ、人気者の仲間入りを果たしたのだと実感した。
ピョン・ウソクは、ブレーク直前の2023年には「力の強い女ト・ボンスン」(17年)のスピンオフ作品「力の強い女 カン・ナムスン」(Netflixで配信中)で悪役に挑戦。怪力な主人公カン・ナムスン(イ・ユミ)に興味を持つ、流通販売会社の代表リュ・シオ役を務めた。ソンジェの爽やかさとは違い、黒いスーツ姿が怪しくも魅力的。ナムスンを利用するつもりが、彼女にひかれてしまう役柄で、ただ記号的な悪者ではなくさまざまな感情を内包するキャラクターを見事に演じた。
また、「ソンジェ背負って走れ」でソル役を担ったキム・へユンは、まっすぐな役がよく似合う。端役やメインキャストではないポジションでキャリアをスタートさせたが、実力で今の地位を切り開いてきた彼女だからこそ「偶然見つけたハル」(19年) で演じたウン・ダノも説得力があった。
「偶然見つけたハル」で演じたのは、自身がマンガに登場するキャラクターであることを知るウン・ダノ。脇役でしかも命を落とすキャラであることが発覚し、エキストラの13番(ハル/ロウン)とともにシナリオと違う行動に打って出る。運命に逆らおうとするダノの姿は勇敢で、自我が芽生えていくハルと恋に落ちていく様子はときめきが止まらず。マンガの結末、そして2人の恋の結末は最後まで読めなかった。
「私の夫と結婚して」より © Studio Dragon by CJ ENM Amazon Prime Videoで配信中
「私の夫と結婚して」ナ・イヌ
夫とその浮気相手に殺されるも、突如10年前に戻ったため人生をやり直そうとする主人公を描く「私の夫と結婚して」(Amazon Prime Videoで配信中)は、ドロドロしているのになぜか笑える復讐(ふくしゅう)劇として今年スマッシュヒット。ナ・イヌは、主人公カン・ジウォン(パク・ミニョン)を支えるユ・ジヒョク部長役が大ハマり。
ジヒョクは、ジウォンのことが大切だからこそ、復讐を誓う彼女をやさしく見守り、行動全てが忠犬のよう。その姿が多くの視聴者をとりこにした。クズ夫と誠実なジヒョクとの振り幅が大きいからこそ笑えるシーンも多く、ほかの強烈な登場人物にまったく引けを取らなかった。
忠犬(?)役でも一味違うのは、新感覚の時代劇「哲仁王后〜俺がクイーン!?」(20年)で演じたキム・ビョンイン。主人公のソヨン(シン・ヘソン)にひそかに思いを寄せるビョンインだが、彼女は王・哲宗(キム・ジョンヒョン)の后(きさき)となってしまう。しかも、ソヨンの体には、女たらしで自信家のシェフ、チャン・ボンファン(チェ・ジニョク)が入り込んでいた。
好きだった相手の変化に戸惑いを隠せず、ビョンインの純粋な愛は狂気となり暴走してしまう。誰よりも愛しているソヨンの中身が実はボンファンというのは、前半は笑いを誘うシーンが多かったが、後半は切なく悲哀があった。
「ドクタースランプ」より Netflixで独占配信中
「ドクタースランプ」パク・シネ
人生の挫折を味わった2人の医師が、自分らしく生きようともがき、支え合ううちにお互いがかけがえのない存在だと気づく姿を描く本作は、「相続者たち」(13年)以来、約10年ぶりにパク・ヒョンシクとパク・シネが共演した。
職場で理不尽なことばかりでうつ病と診断されたハヌルをパク・シネ、若くして成功するも汚名を着せられたジョンウをパク・ヒョンシクが演じた。立ち直れないほどのできごとが起こってから始まる彼らの物語は、苦しくも希望を見いだそうとする2人の演技だからこそ大きく心を揺さぶった。人は簡単には変わることはできないけれど、ハヌルやジョンウの姿を見ていると、癒やされて前に進もうと思わせる力があった。パク・シネの演技はもちろん、シリアスなテーマながらコメディーパートもパク・ヒョンシクの実力が遺憾無く発揮されていた。
パク・シネは、9月から11月に韓国で放送された主演ドラマ「悪魔なカノジョは裁判官」(全14話、ディズニープラスで配信中)では、エリート裁判官に乗り移った〝悪魔〟のカン・ビンナ役を務めた。あるミスを犯した悪魔のユースティティアは、ビンナに憑依(ひょうい)して、人間界で10人の罪人を見つけて地獄に送らなければならなくなる。しかし、熱血刑事ハン・ダオン(キム・ジェヨン)のことが気になり始め、思いもよらない展開となっていく。すがすがしいほど冷徹で高飛車な態度がクセになるビンナをパク・シネが好演。最高視聴率16.1%を記録するヒットとなった。
パク・シネといえば、10代の頃から活躍し、「美男<イケメン>ですね」「ピノキオ」「ドクターズ〜恋する気持ち〜」など数多くの作品に出演し、34歳ながら20年以上のキャリアがあるベテランだ。それでも、1年の間に主演作が2作品放送(さらに世界配信)されることは、人気や知名度だけでは成し遂げられることではないだろう。演技に脂が乗った34歳の今、最高の演技を見せてくれたが、パク・シネのこれからにもっと期待したくなった。