毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2021.2.04
樹海村
新型コロナウイルス禍で世界全体がホラー映画の中で進行しているような現在、「犬鳴村」「事故物件 恐い間取り」のような少しまがまがしい映画に人々はリアリティーを感じるのかもしれない。「犬鳴村」とほぼ同じスタッフで製作された今作も現代社会の重苦しい空気を漂わせている。
富士の樹海の奥深くに、かつて何者かが暮らす村があり、呪いの箱が封印された。13年後、天沢響(ひびき)(山田杏奈)と鳴(めい)(山口まゆ)の姉妹の前に箱が現れると、周りの人々に次々と悲劇が巻き起こる。
「自然への畏怖(いふ)」というテーマが作品を覆い、清水崇監督は樹海の映像を駆使して不穏な空気を醸し出した。途中で出てくるゾンビたちは衣装も動きも陳腐で怖くないが、恐ろしいのは、響が特殊な能力ゆえに背負う暗い運命で、よくこれほど救いのない主人公を造形したと思うし、山田も最後まで重い表情で演じきった。呪いの箱を通じて恐怖が伝染していく様が、目に見えないウイルスにおびえる現況とクロスした。1時間57分。東京・丸の内TOEI、大阪・梅田ブルク7ほか。(木)
ここに注目
人外魔境の集落に伝わる恐ろしい呪い。2匹目のドジョウを狙った企画で、思う存分腕を振るった清水監督。ユーチューバーの中継画面とかパソコンのアイコンとか、今様を取り込んだあの手この手のアイデアに感嘆。身勝手な人間の黒歴史という骨格が、けっこう効いている。(勝)