TM & © 1984,2023 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

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2023.10.21

元祖ジェットコースタームービー「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」を見た大学生ライターを元キネ旬編集長が評価する

ひとシネマには多くのZ世代のライターが映画コラムを寄稿しています。その生き生きした文章が多くの方々に好評を得ています。そんな皆さんの腕をもっともっと上げてもらうため、元キネマ旬報編集長の関口裕子さんが時に優しく、時に厳しくアドバイスをするコーナーです。

関口裕子

関口裕子

古庄菜々夏

古庄菜々夏

大学生のひとシネマライター古庄菜々夏が書いた映画コラムを読んで、元キネマ旬報編集長・関口裕子さんがこうアドバイスをしました(コラムはアドバイスの後にあります)。

1984年の映画「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」。古庄菜々夏さんの目にはどう映ったのでしょう?
 
古庄さんが気になったポイントは、大きく三つ。「ジェットコースタームービー」であること、TPOに合わせたインディ・ジョーンズの「ファッション」、コンピューターグラフィックス(CG)技術がほとんど使われていない「当時の撮影手法」をあげています。
 
息をつく暇もないくらい展開が速い映画を指すジェットコースタームービーという言葉。「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」を製作した際、スティーブン・スピルバーグ監督自身が言った、「ローラーコースター(日本ではジェットコースターと表記された)に乗った気分になるよう仕上がっています」という言葉から名付けられたのかもしれません。
 
いまでは映画を表現する言葉としてスタンダードになっていますので、私たちは同じイメージを受け取ることができていると思っています。ですが、それが何を指すものなのか、具体的に拾い出しているのがわかりやすく、いいなと思いました。
 
インディの通常ファッションは、大学教授としてはだいぶアウトドア仕様。彼に白いタキシードを着せたのは、ジョージ・ルーカスのアイデアだったそうです。彼はこういう一面も持つ人だという演出ですが、キャラクターをぼやかしてしまう可能性もあることなので、1作目の成功があったからこそできたことなのでしょう。古庄さんは、「ギャップと色気があってこれがまたかっこいい」と書いていますが、そう思ってもらうことこそ、スピルバーグやルーカスが望んだことなのだと思います。
 
「当時の撮影手法」を駆使して撮影されたシーンの筆頭は、トロッコに乗っての逃走劇。実際に人が乗ることのできるトロッコとそれを走らせる巨大なセットをスタジオにしつらえたそうですが、もうひとつ人形を乗せたミニチュアのトロッコとそれが走るコースも用意したのだそう。その二つの方法で撮ったシーンをうまく編集することであの迫力あるシーンが生み出されたそうです。
 
古庄さんのいう通り、全てがコンピューターで製作される「CG技術」ではありませんが、撮影した映像にコンピューターで効果を加える形の「VFX(ビジュアル・エフェクツ)」の技術が使用され、ダイナミックなシーンに仕上げられています。
 
これらを担当したのは、ジョージ・ルーカス監督の「スター・ウォーズ」で視覚効果を担当したILM(インダストリアル・ライト&マジック)。1989年の「インディ・ジョーンズ 最後の聖戦」では、早くもフルCGの場面を作っているそう。技術の進歩する速さには驚かされますね。
 
古庄さんが映画を作る過程について指摘してくれたからこそ、気づけたさまざまなこと。それこそが「物語としてはフィクションだが、カメラの向こうで行われていることはリアルだからこその緊迫感や現実味が感じられる映画の醍醐味(だいごみ)」を感じさせてくれるものなのだと思いました。映画を読むだいご味ですね。

古庄さんコラム

有名テーマパークのアトラクションにもなっている「インディ・ジョーンズ」シリーズ。今回注目するシリーズ第2弾「魔宮の伝説」が製作されたのは私が生まれる19年も前だ。しかし、今でもこうして大人気映画として親しまれている。傑作が傑作であるゆえんをZ世代の目線から探っていきたい。
 

大学教授としての服装や取引現場でのドレスコードなど、TPOに合わせた格好にも注目

インディ・ジョーンズ、と検索してみると「ジェットコースタームービー」と出てくる。激しい映像の連続で息をつく暇もないような映画のことをそのように呼ぶが、この作品は激しい映像だけではなく緩急があるからこその「ジェットコースター」なのではないか。
 
大波乱のパーティーから抜け出したと思ったら、あっという間に次は飛行機から飛び降りるハメになる。かと思えばインディがスーツを着て会食をしながら相手に探りを入れてみたり、ヒロインといい雰囲気になったりと、いろんな意味で息をつく暇がないのは変わらないが1作目に比べてアドベンチャー要素以外の描写が丁寧だったのは2作目の特徴かもしれない。
 
今回インディは中折れ帽にジャケットそしてむちという冒険スタイルだけではなく、大学教授としてのファッションや取引現場でのドレスコードなどTPOに合わせた格好が特徴的だ。
 
いつものスタイルももちろんだが、この作品で見られるインディはギャップと色気があってこれがまたかっこいい。そんなインディの色気にヒロインはだんだんとひかれていき、ついにはお互いに良い雰囲気になるのだが、そんな夜に敵襲に遭いすぐに冒険へと走り出してしまうインディらしさにはじらされることになる。
 

「魔宮の伝説」が傑作、の一因は妥協せず作り上げた製作陣の熱量にあり

 インディがたどり着く先々の異文化の描き方がまたぶっ飛んでいる。蛇の詰め物からは何匹もの蛇が出てきて食卓を埋め尽くし、デザートには猿の脳みそシャーベット。現地の人々からはやりすぎだと非難ごうごうかもしれないが、その分映像としての衝撃が強く、後に続く少々刺激の強い展開にもなんとかついていけるような構成になっているのではないだろうか。予想以上のものが次々と目に入ってくるおかげで世界観に強く引き込まれる。
 
宮殿に着いた頃からだろうか、個人的には目を覆いたくなるような映像が続くのだが、当時の撮影技法にもヒントがあるのではと思った。1980年代前半の映画にコンピューターグラフィックス技術はほとんど使われていない。当時は特撮のような画(え)を撮ろうと思ったらミニチュアや手描きが主流の時代だった。
 
「ジェットコースタームービー」と呼ばれるこの映画にももちろんミニチュアでの撮影が盛り込まれているのだが、正直それは気にならずもはやその荒々しさがこの映画とマッチしているとも感じた。逆に映画終盤に登場する橋は実際に巨大な橋を製作して撮影している。当時の撮影手法の良さでもあるし、さすがハリウッドの規模感というものでもある。
 
これはこれでものすごい技術なのだが、何より私が衝撃的だったのは虫がはびこる宮殿でのシーンだ。1匹や数匹というレベルではない。何万匹と虫を用意して本番前に俳優の体にも大量の虫たちを乗せて撮影していく。想像しただけで悲鳴が出そうだが、それをやってのけた演じる役者たちの努力のたまものでもあるシーンだ。
 
物語としてはフィクションだが、カメラの向こうで行われていることはリアルだからこその緊迫感や現実味が感じられる映画の醍醐味(だいごみ)だと思う。無論、直視するのにはそれなりの勇気がいるが(笑い)、作品に必要なシーンを妥協することなく作り上げる製作陣の熱量がこの映画を傑作と呼ばせたのではないだろうか。
 

あっという間に時間が流れた「魔宮の伝説」や他作品もおさらいしつつ、新作の公開に心躍る

 1作目とは少しテイストの違う2作目だが、インディ・ジョーンズらしさは健在だ。その〝らしさ〟は見た人にしか分からない。自分自身「インディ・ジョーンズ」シリーズを見たことがなかった。もちろんこれを機にシリーズの他作品も含め拝見したのだが、ここまで画面にかじりついて見たのは久しぶりだった。
 
飲み物を取りに行く暇すら与えられないような時間があっという間に流れていく。日常に少し刺激が足りないなと感じている人は今すぐ見るべき「ジェットコースタームービー」だ。
 
6月30日(金)に公開予定の「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」は40年以上続いたシリーズの最新作にして5作目となる。前作「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」(2008年)からは実に15年ぶりの新作であり、ハリソン・フォードは80歳を迎えている。40年以上にわたってインディを演じてきた彼の新境地かつ最後の冒険となる最新作に心が躍る。
 
おこがましいようだが、この企画を通してシリーズを一気見しすっかりファンになってしまった自分は、最新作の公開が待ち遠しくて仕方がない。ぜひ劇場で目に焼き付けたいと思う。

 
 


「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」
4K Ultra HD+ブルーレイ:6589円(税込み) 発売中
Blu-ray:2075円(税込み)
DVD:1572円(税込み)
NBCユニバーサル・エンターテイメント
※2023年6月現在の情報です。
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ライター
関口裕子

関口裕子

せきぐちゆうこ 東京学芸大学卒業。1987年株式会社寺島デザイン研究所入社。90年株式会社キネマ旬報社に入社。2000年に取締役編集長に就任。2007年米エンタテインメント業界紙VARIETYの日本版「バラエティ・ジャパン」編集長に。09年10月株式会社アヴァンティ・プラス設立。19年フリーに。

ライター
古庄菜々夏

古庄菜々夏

ふるしょう・ななか
2003年7月25日生まれ。福岡県出身。高校の時に学生だけで撮影した「今日も明日も負け犬。」(西山夏実監督)に主演し「高校生のためのeiga worldcup2021」 最優秀作品賞、最優秀女子演技賞を授賞。All American High school Film Festival 2022(全米国際映画祭2022)に参加。現在は東京の大学に通いながら俳優を目指す。

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