老後の資金がありません ⓒ2021映画「老後の資金がありません!」製作委員会

老後の資金がありません ⓒ2021映画「老後の資金がありません!」製作委員会

2021.10.28

老後の資金がありません!

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

主婦の篤子(天海祐希)は節約をモットーに2人の子供を育て上げ、ブランドバッグを買うのも我慢してコツコツと貯蓄に励んでいた。しかし、義父の葬儀代や娘の結婚費用など想定外の出費が相次ぎ、夫・章(松重豊)の会社は倒産。篤子もパートをクビになる。家計が大ピンチに陥る中、義母・芳乃(草笛光子)との同居が決まる。

「老後に2000万円必要」とされる今、ギョッとして不安を覚えるタイトルだが中身は完全なコメディー。通帳の残高を眺めてはため息をつき、家計を立て直そうと奮闘する篤子。一方、ぜいたくな暮らしに慣れきった芳乃や家計は妻任せでのんきな章、節約料理に不満たらたらの息子など、どの家庭にもいそうなキャラクターに共感できる。
篤子のヨガ仲間を助けるため、芳乃と一計を案じる場面はハチャメチャ。天海のコメディエンヌぶりと草笛の女優生命を懸けたかのような熱演に、老後の不安をちょっとだけ忘れることができた。前田哲監督。1時間55分。30日から東京・丸の内TOEI、大阪・梅田ブルク7ほか。(倉)

異論あり

コメディーに誇張はつきものだが、深刻な現実を題材にしてやり過ぎると白々しい。チョイ役で顔を出す著名人も、はしゃぎすぎて浮き気味だ。思うように生きろ、なるようになるという楽観的なメッセージは爽やかなのに、リアリティーの重しがないと上滑り。(勝)