誰になんと言われようと、好きなものは好き。作品、俳優、監督、スタッフ……。ファン、オタクを自認する執筆陣が、映画にまつわる「わたしの推し」と「ワタシのこと」を、熱量高くつづります。
2023.10.17
「あぁ、友達っていいなぁ。なんでも話せちゃうもんなぁ」高校生が見た「アナログ」の劇中3人の友情
「愛」ってなんだろう。
誰もが一度は考えたことがあるはず。この映画を見て〝 大切なものは目に見えない〟。私の頭の中にはこの言葉がよぎります。
今までに感じたことがないくらい、自分のそばにいてくれている人はすごく〝大切な存在〟になっているのだということを感じました。いつも近くにいてくれている家族や友達に、なんだか「ありがとう」って伝えたくなった。なんでもない話でも聞いてくれて、一緒に笑ってくれる人がそばにいてくれているって本当にうれしいことだなって。
手作り模型や手書きイラストにこだわるデザイナー、水島悟(二宮和也)が携帯を使わない謎めいた女性、美春みゆき(波瑠)に恋をするこの物語。みゆきは携帯を持っていないため、悟との連絡先の交換はしません。ですが、喫茶店ピアノで〝 毎週木曜日に同じ場所で会う〟ことを約束します。
〝 ぬくもり〟や〝 あたたかい〟
このお話は、今、私たちが生きるデジタル化されている現代と同じ世界。けれどなぜか、昔の時代の出来事かのように感じました。みゆき以外の人たちはみな携帯を持ち歩いているのに、なぜかすごく昔のお話のように感じました。
「アナログ」という言葉から、私は〝 ぬくもり〟や〝 あたたかい〟といった言葉を連想します。デジタル化された現代だからこそ、悟とみゆきのアナログな関係が心に染みました。
毎週木曜日に喫茶店ピアノで会う2人の姿は、見ていてとてもニコッとほほ笑んでしまうシーンばかりでした。2人だけで過ごす特別な木曜日。「会いたい」と1週間思い続ける悟は、実際にみゆきと会った時照れくさそうな表情をして会話をします。悟が家族や友達に見せる緩んだ表情とは違って、みゆきに会う時は少し緊張気味な感じ。みゆきに見せる雰囲気と、気を緩めて話せる人たちに見せる雰囲気は全く違う。私は家族や友達に見せる彼の雰囲気がとても好きです。みゆきにはまだ見せていない本当の悟を見られるのがとても楽しくて。特に、小学生以来の友人の高木淳一(桐谷健太)と山下良雄(浜野謙太)とのトークが最高に面白くて大好きな場面です。私が普段友達と会話をする時のノリと彼らが会話をするときのノリは、そっくりで重なるものが多いです。
「あぁ、友達っていいなぁ。なんでも話せちゃうもんなぁ」と、3人を見て、自分の友達との関係を重ねました。私自身、今までもたくさんのヒミツを友達に話してきた。多分、この先もずっとそうだと思う。家族に言えないことも言い合ってしまうのが友達。友達と家族は違うけれど、私の中での友達とは家族にほぼ近い存在です。
普段は、誰かが友達と会話をしているところを見ることよりも自分が友達と会話をしていることが多く、自分のことを客観的に見ていなかったので彼らを見て友達がいることのうれしさを改めて感じました。一日の中で会話できる時間が少なかったとしても、そのひとときが笑い合っていられる時間になっているのであれば、それだけで「いい一日だったな」と、私は晴れやかな気持ちで一日を終えることができます。友達って最高だなって思えます。
そんな3人の様子を見て、小学生の時からの関係が今も薄れることなく今日(こんにち)まで変わってこなかったのだろうなと思いました。悟とみゆきの「アナログ」な関係を彼の昔からの友達が見届けているというのもあり、この映画に「昔の雰囲気」があると感じたのかもしれないです。
〝 「愛」とはなにか〟。冒頭に置いたこの言葉。今の私が出すその問いの答えは「幸せ」です。幸せな時は愛を感じるし、愛を感じるときは幸せだな、と思う。「愛」と「幸せ」とは、互いを生み出している関係のように感じます。
内澤さんは気さくでいつも優しい
本作の劇伴・楽曲を担当したのは、4人組バンド「androp」のVocal&Guitarを務める内澤崇仁さん。内澤さんは、東京2020パラリンピック開会式で私が共演した武藤将胤さんが作詞した「FLY」の作曲も務めています。「FLY」のMUSIC VIDEOには、私も出演させていただきました。今年、武藤さんが主催するALS(筋萎縮性側索硬化症)啓発音楽フェス「MOVE FES.2023」の舞台で「FLY」を内澤さんと一緒に生披露しました。内澤さんは気さくでいつも優しく、気軽に声をかけてくださるすてきな方です。
そして、インスパイアソングの「With」は〝 小説を音楽にするユニット〟「YOASOBI」のVocalとしても活動中の、幾田りらさんが歌います。この曲のりらさんの透き通る美しい歌声とあたたかい歌詞に私は引き込まれました。内澤さんの繊細でやさしい編曲と「With」という曲の名前も、映画の内容とマッチしていてとてもすてきです。
「アナログ」は見終えた後に自分の人生ときっと照らし合わせてしまう作品だと思います。恋愛も、そして友情も。今秋一番に、私が推す作品です。少し寒くなってきた今日このごろに見て心を温めてみるのはいかがですか。