PLAN 75©2022「PLAN 75 」製作委員会 /Urban Factory/Fusee

PLAN 75©2022「PLAN 75 」製作委員会 /Urban Factory/Fusee

2022.6.01

「PLAN 75」「常識」の闇が覆う世のありさま 

「仏教の次に映画が大好き」という、京都・大行寺(だいぎょうじ)住職の英月(えいげつ)さんが、僧侶の視点から新作映画を紹介。悩みを抱えた人間たちへの、お釈迦(しゃか)様のメッセージを読み解きます。

英月

英月

英月の極楽シネマ:PLAN 75(2022年、日本・仏・フィリピン)


この映画で描かれるのは、少子高齢化がさらに進んだ近い未来。<プラン75>とは、75歳以上の人々に自らの最期を選ぶ権利を認め、支援する制度。早い話、国が希望者を募り施設で安楽死をさせるのです。年齢を基準に命が線引きされる設定に驚きますが、当事者でさえ「仕方がない」と、消極的ながらも納得をしている姿にどこか現実を見るようで心が痛みます。

78歳の角谷ミチ(倍賞千恵子)は夫と死別し、古い団地で1人暮らしをしています。清掃の仕事をしていますが、あることを機に高齢の従業員は退職させられます。おまけに団地が取り壊されることに。年齢を理由に、新しい仕事も住む場所も見つけられず、社会的な居場所も、そして物理的な居場所も共に失います。そんなミチに、笑顔で炊き出しの温かな食べ物を渡したのが、市役所の<プラン75>申請窓口で働く岡部ヒロム(磯村勇斗)でした。制度に疑いを持たず、淡々と働くヒロムですが、申請に来た伯父・幸夫とたまたま再会したことから揺らぎ始めます。

あえて登場人物たちの心情を細かく描かず、見る人に委ねたという早川千絵監督。私なりに受け止めると、<プラン75>に申請、つまり安楽死を選んだ幸夫とミチは、自分の意思ではなく、生産性がなくなった者はこの世から消えて当然と言わんばかりの世間の価値観の流れに押されただけなのです。そしてこれは、私たちの日常でもあることです。涅槃(ねはん)経には「闇とは世間」だと説かれていますが、世間の常識、当たり前が闇のように私の目を覆っているのです。闇を破るのは光です。映画の最後、ミチの姿に生きる勇気をもらいます。6月17日から大阪ステーションシティシネマほかで公開。(真宗佛光寺派・大行寺住職)

PLAN 75

少子高齢化が一層進んだ近い将来の日本。満75歳から生死の選択権を与える制度<プラン75>が国会で可決・施行された。様々な物議を醸していたが、超高齢化問題の解決策として、世間はすっかり受け入れムードとなる。
夫と死別してひとりで慎ましく暮らす、角谷ミチは78歳。ある日、高齢を理由にホテルの客室清掃の仕事を突然解雇される。住む場所をも失いそうになった彼女は<プラン75>の申請を検討し始める。一方、市役所の<プラン75>の申請窓口で働くヒロム、死を選んだお年寄りに“その日”が来る直前までサポートするコールセンタースタッフの瑶子は、このシステムの存在に強い疑問を抱いていく。また、フィリピンから単身来日した介護職のマリアは幼い娘の手術費用を稼ぐため、より高給の<プラン75>関連施設に転職。利用者の遺品処理など、複雑な思いを抱えて作業に臨む日々を送る。果たして、<プラン75>に翻弄される人々が行く着く先で見出した答えとは―。

ライター
英月

英月

えいげつ 1971年、京都市下京区の真宗佛光寺派・大行寺に生まれる。29歳で単身渡米し、ラジオパーソナリティーなどとして活動する一方、僧侶として現地で「写経の会」を開く。寺を継ぐはずだった弟が家出をしたため2010年に帰国、15年に大行寺住職に就任。著書に「二河白道ものがたり いのちに目覚める」ほか。インスタグラムツイッターでも発信中。


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