この1本:「PLAN 75」 〝安楽死〟受容する空気
口減らしのために年寄りを捨てる風習は「楢山節考」でも描かれたが、そこには必要悪の後ろめたさと葛藤があった。今作は「自由意思」と「公益性」のツルリとした感触で、命を奪うことの罪悪感は拭い去られている。不寛容で生産性を求める世の中に、この暗い未来像は絵空事ではない。早川千絵監督の長編デビュー作。カンヌ国際映画祭でカメラドール(新人監督賞)のスペシャルメンションを受けた。 75歳になると安楽死を選べる「PLAN75」が導入されている。ホテルの客室清掃の仕事で働く78歳のミチ(倍賞千恵子)は、同僚とともに高齢を理由に解雇された。身寄りもなく働き口も見つからず途方に暮れ、プラン75の窓口を訪れる。一方...