第75回カンヌ国際映画祭の公式ポスター

第75回カンヌ国際映画祭の公式ポスター

2022.5.15

トピックス:第75回カンヌ国際映画祭 開幕迫る 是枝監督2度目のパルムドールなるか

公開映画情報を中心に、映画評、トピックスやキャンペーン、試写会情報などを紹介します。

3年ぶり5月開催でにぎわい復活

第75回カンヌ国際映画祭が5月17日(日本時間18日)、南仏・カンヌで開幕する。コロナ禍の影響で一昨年は実質中止、昨年は時期をずらしての開催で、通常通りの5月開催は3年ぶり。コロナで参加を控えていたスターたちも参集し、主会場のパレ・デ・フェスティバルはカンヌらしい華やかなにぎわいを取り戻しそうだ。


 

大物勢ぞろいも、女性監督は少数

最高賞のパルムドールなどを競うコンペティション部門には、21作品が選出された。是枝裕和監督は「ベイビー・ブローカー」で、パルムドールを受賞した2018年の「万引き家族」以来のコンペ入り。もっとも今作は韓国資本で、国籍で言えば韓国映画だ。
 
「ベイビー・ブローカー」は、赤ちゃんポストに預けられた子どもを横取りした2人組と子どもの母親が、里親を探すロードムービー。資本も撮影も韓国で、ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、ペ・ドゥナら人気俳優が出演している。日本での公開は6月24日の予定だ。
 


他にも、ベルギーのダルデンヌ兄弟、ルーマニアのクリスティアン・ムンジウ、スウェーデンのリューベン・オストルンドとパルムドール監督が並び、デビッド・クローネンバーグ、クレール・ドゥニ、イエジー・スコリモフスキら大ベテランも新作を出品。
 
注目は、「TCHAIKOVSKY’S WIFE(チャイコフスキーの妻)」を出品するロシアのキリル・セレブレンニコフ監督だ。前回カンヌでコンペ入りした「インフル病みのペトロフ家」が日本で公開されたばかりだが、セレブレンニコフ監督は反ロシア的言動で政府から圧力を受けており、ウクライナ侵攻も痛烈に批判。現在はドイツ国内に滞在中という。映画祭事務局は、ロシア政府と関係のある映画人の参加を認めない一方で、反戦の意志を示すロシア人は受け入れると表明している。セレブレンニコフ監督もカンヌに参加する予定で、会見などでの発言が話題となりそう。
 
大物がずらりと並んだが、このうち女性監督(共同監督を含む)は5人だけ。カンヌが掲げる男女均衡とはほど遠い選択となった。審査員はフランスの俳優、バンサン・ランドンを長とする9人だ。
 

PLAN 75©2022 『 PLAN 75 』製作委員会 /Urban Factory/Fusee

先進的な作品を上映する第2コンペの「ある視点」部門には、日本から早川千絵監督の長編デビュー作「PLAN 75」が出品される。こちらは新人監督作品を中心に21本。
 
「PLAN 75」は、75歳になると死を選ぶことができるようになった日本で、78歳の女性主人公の選択を描く。早川監督は14年のカンヌで、学生映画のコンペ部門「シネフォンダシオン」に「ナイアガラ」を出品している。初長編作品で8年ぶりのカンヌ再訪を果たす。早川監督は新人監督に贈られる「カメラドール」賞の対象となっており、受賞すれば「萌の朱雀」の河瀬直美監督以来の日本人となる。
 

「カメ止め!」の仏リメークが開幕作に

映画祭の開幕作品として上映されるフランス映画「キャメラを止めるな!」は、日本映画「カメラを止めるな!」のリメークだ。「アーティスト」などのミシェル・アザナビシウス監督が手がけている。
 
4月の発表時点では「Z」の原題だったが、ロシア国内で「Z」がウクライナ侵攻支持のシンボルとして使われていることから「Coupez!(カット)」にタイトルを変更した。日本では「キャメラを止めるな!」との題名で7月15日に公開される。ただカンヌの発表にはなぜか、日本映画のリメークであることに一言も触れていない。
 
古典的名作を上映する「カンヌクラシックス」部門では、河瀬直美監督による東京オリンピックの公式記録映画「東京2020オリンピック SIDE:A」が上映される。1972年のミュンヘン五輪の記録映画と並んでの選出だ。
 
コンペ外作品として「トップガン:マーヴェリック」、バズ・ラーマン監督によるエルビス・プレスリーの伝記映画「エルビス」、ミッドナイトスクリーニングとして、韓国の俳優イ・ジョンジェの監督デビュー作「HUNT」なども上映される。
 

コンペティション部門出品作品と監督(日本公開未定の作品は英題)

 
「HOLY SPIDER」 アリ・アッバシ
「FOREVER YOUNG」 バレリア・ブルーニ・テデスキ
「CRIMES OF THE FUTURE」 デビッド・クローネンバーグ
「TORI AND LOKITA」 ジャン・ピエール&リュック・ダルデンヌ
「STARS AT NOON」 クレール・ドゥニ
「BROTHER AND SISTER」 アルノー・デプレシャン
「CLOSE」 ルーカス・ドン
「ARMAGEDDON TIME」 ジェームズ・グレイ
「ベイビー・ブローカー」 是枝裕和
「NOSTALGIA」 マリオ・マルトーネ
「R.M.N」 クリスティアン・ムンジウ
「TRIANGLE OF SADNESS」 リューベン・オストルンド
「DECISION TO LEAVE」 パク・チャヌク
「SHOWING UP」 ケリー・ライカート
「LEILA’S BROTHERS」 サイード・ルスタイ
「BOY FROM HEAVEN」 タリク・サレ
「TCHAIKOVSKY’S WIFE」 キリル・セレブレンニコフ
「BORA BORA」 アルベルト・セラ
「MOTHER AND SON」 レオノール・セライユ
「EO」 イエジー・スコリモフスキ
「LE OTTO MONTAGNE」 シャルロッテ・ファンデルメールシュ、フェリックス・バン・ヒュルーニンゲン