©2023映画『PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~』

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2024.2.24

実話に着想を得た、eスポーツ日本初の映画化!「PLAY!〜勝つとか負けるとかは、どーでもよくて〜」を同世代の高校生が見た

誰になんと言われようと、好きなものは好き。作品、俳優、監督、スタッフ……。ファン、オタクを自認する執筆陣が、映画にまつわる「わたしの推し」と「ワタシのこと」を、熱量高くつづります。

座間耀永

座間耀永

ロケットリーグ。それは、ジャンプやロケット飛行ができる特殊な車が、3対3でサッカーを行うコンピューターゲーム。プレーヤーは、それぞれ仮想空間でカスタマイズした自分の車を操作し、シュートを決めた数を競う。ロケットと名付けられた通り、ハイスピードかつ、激しいアクションゲームだ。


 
ロケットリーグに参加するには、まず自分でお気に入りの車を選ぶのだが、カスタマイズが奥深い! ゲームを始める前から、自分の車づくりが楽しくて仕方がない人が多いのではないだろうか。ガレージ、ボディー、デカール(車に貼るシール)、塗装、ホィールの他、なんと、ロケットトレイルという車から出るブーストは色や音もカスタマイズできる。トッパーは車の上につけるトサカのようなデザイン。アンテナのデザインも多様だ。面白いのは、車が最高速度が出たときに出る軌跡。これも光のようなデザインが選べる。エンジン音はもちろん、極めつきは、相手のゴールにシュートが決まった時の爆発音のカスタマイズ。ロケットリーグではゴールに入った瞬間ボールが爆発するため、そのエフェクトをカスタマイズできるのだ。もうそれはそれは、プレーヤーのわくわくは止まらない!
 
この映画は、「全国高校eスポーツ選手権」のロケットリーグ部門に挑戦した、徳島県の高等専門学校生の実話に着想を得ている。事実、2023年、徳島県の阿南工業高等専門学校が全国大会に臨んでいる。学生たちがリアルに大会へ挑んだ事実が物語に信ぴょう性をもたらし、感動的だ。
 

クラスの人気者と天才プレーヤー、Vチューバーオタクの凸凹トリオ+人気Vチューバー

イケメンでクラスの人気者の翔太は、校内に張られた「〝 全国高校eスポーツ大会 〟メンバー大募集」のポスターに引きつけられる。このポスターの作製者は、eスポーツ上位ランカーで、成績も優秀な1学年上の達郎。達郎は学校の先生に反対されながらも、ポスターを校内に張り、3人編成のチーム員を募集していた。達郎は、かつて、バスケットボールの選手。しかし、けがで断念せざるを得ず、今は、天才ゲーマーとして腕を磨いていた。このリーグに何がなんでも参加したい達郎は、一見チャラく、しかもゲーム経験がない翔太を受け入れる。

 
翔太は、金髪。最近、クラスメートに手伝ってもらい、安全ピンでピアスの穴をあけたばかりの今どきの高校生。彼に試合ができるのか? そして、達郎が最後に無理やり仲間に引きこんだのが、たまたま近くの席に座っていたVチューバーオタクの亘。この大会が無かったら、決して仲間にならなかったであろう、寄せ集めチームの名称はその名も「アンダードッグス(かませ犬)」。はじめは、息が合わない3人だったが、練習するうちに本当の「仲間」になっていく姿に、観客は引きつけられる。


 
3人の家庭環境もそれぞれだ。優等生の達郎の家は、父親が酒浸りで母親はいつもイライラ。翔太の家は複雑だ。DV(ドメスティックバイオレンス)の父親の下、翔太は長男らしく弟2人を優しく慈しむ。やるせない思いを胸に秘めている彼の姿は、学校のクラスメートが知らない一面であろう。そんな翔太だから、日常にわくわくが欲しかったに違いない。人気者でありながら、どこか楽しくなさそうな翔太が、ロケットリーグを知って、練習に励んでいくうちに、はじける笑顔が増えてくる。一方で、ポテトチップス片手に何台ものパソコンに囲まれ、Vチューブのキャラとのおしゃべりに興じるオタクの亘の家庭は、温かな幸せ家族。達郎と翔太が家族一同で食事をするシーンがないのに対し、亘の家では家族4人が幸せそうに食卓を囲む。家族は、亘が新しいことを始めたことに気づき、応援。それをうれしそうに亘がかみしめる。きっと高校生活ではうかがい知れない3人のバックグラウンドを示唆したシーンの対比が心に刺さる。
 
そして特筆すべきは、人気Vチューバーの胡桃のあが本人役で出演していることだ。これはファンとしては見逃せない!
 

青春の1シーンも見逃せない

高校生が主役の映画となれば胸がきゅん、となるシーンも見逃せない。ネタバレになるので詳しく書けないが、翔太を好きな桃子。アプローチするも届かないシーンが切ない。それでいて、最後に翔太が桃子の存在に気づき、連絡した時には、桃子は・・・・・・。ゲームだけでなく、そんなドキドキと切ない気持ちを味わえる映画でもある。

 
俳優が見事
主役の奥平大兼さんは、最近では「最高の教師」の迫真の演技が記憶に新しいだけに、同じ高校生でも人を殺す役と陰のある人気者を演じ分ける演技の振り幅に見応えを感じる。個人的には、今回の役がとても好きだ。鈴鹿央士さんについては、デビュー作、「蜜蜂と遠雷」を劇場で見たとき、私はこの俳優さんは天才か?と思ったが、今回も抜群の演技力でストーリーを引っ張っていた。徳島県出身の山下リオさんが起用されるなど、徳島の海を前に、多彩な役者さんたちの高専生らしい演技がさく裂する姿は魅力的だ。

 

徳島県の魅力

私はまだ徳島県に行ったことがないのだが、2年前にロサンゼルスでサマーキャンプをした際に仲良くなった友人が徳島県に住んでいる。彼女の所属する演劇部は全国大会で優勝をし、昨年、東京で上演、取材も入った。私も足を運んだのだが、演技の迫力とチームワークが圧巻だった。アンダードックスがチームとして強くなっていき、東京の本選に来るシーンが、友人のチームと重なって胸が熱くなった。
 

先生がいい味で作品を引っ張っている

映画の冒頭で、達郎が張っていくポスターを校則違反だと言いながら剝がしていった先生だが、学生の頑張る姿をみて顧問として協力してくれることに。次第に学生を応援していく様子は、感情移入ができる。東京の本選に引率し、応援してくれることは何より学生には心強い。
 
ネタバレになるので結果は言えないが、このタイトルにあるように、勝つとか負けるとか、そんなことより、大切な友情や夢中になるものを見つけていく高専生の姿をぜひ劇場で楽しんでほしいと思う。
 
3月8日(金)公開。

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ライター
座間耀永

座間耀永

ざま・あきの 2006年生まれの高校生。小3から子供新聞記者、毎年、数々の作文コンクールに入賞。SDGsシンポジウム登壇。2023年6月、「言葉の力」コミュニティ、非営利型一般社団法人AZ Bande(アイジー バンデ)を設立。作文教室やSDGs活動、ヨット普及活動を通し、売り上げの一部を教育クーポンを配布する団体に寄付。カナダのセーリング団体ISPA創始者に師事、小型船舶2級保持者。会社名は亡父の愛艇から。


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