毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2023.2.24
「少女は卒業しない」
廃校に伴い、校舎の取り壊しが決まった高校。卒業生代表の答辞を担当する料理部の部長、まなみ(河合優実)をはじめ、それぞれの思いを抱えた生徒たちが卒業式までの2日間を過ごす。「桐島、部活やめるってよ」などで知られる直木賞作家、朝井リョウの連作短編小説を1本の作品として映画化した。
片思いの切なさや教師へのひそかな恋心、進路によって離れ離れになる彼氏への気持ち。短編「カランコエの花」で脚光を浴びた中川駿監督はどこか懐かしさを感じさせるタッチで教室、屋上、階段の踊り場、いつもの帰り道などを切り取り、ありふれているからこそ特別な時間を描き出す。才能あふれる若手俳優と出会えるのも、青春群像劇を見る喜びのひとつ。どの俳優も自然なリズムの会話で見る者を引き込む。とりわけ日本映画界の注目株で、本作では終盤に秘めた思いを伝えるまなみを演じた河合、透明感あふれる歌声を聞かせる佐藤緋美の存在感が鮮やかに心に残った。2時間。東京・新宿シネマカリテ、大阪・シネ・リーブル梅田ほか。(細)
ここに注目
廃校が決まっている校舎という空間、地方の町ゆえの将来の選択といった設定が、映像とドラマの両面で生かされている。そして何より〝卒業〟を誰にも訪れる人生の節目と捉え、時間の経過とともに特別な感情を表出させていく若手女優たちの演技がみずみずしい。(諭)