チャートの裏側

チャートの裏側

2022.11.11

チャートの裏側:鬱憤を吹き飛ばす体験

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)。

ひとしねま

大高宏雄

評判のインド映画「RRR」で、得難い経験をした。公開3週目、日曜日の東京・新宿のシネコンである。映画が終わると、「ワー」といったような歓声が起こった。かなりの人数だった。瞬発的に、前列席から拍手が湧き上がり、それが自然発生的に中央席あたりまで広がった。

今年、最高の映画館体験であった。映画への興奮が、歓声、拍手とつながる光景は、なかなか見られることではない。この数週間、新作の興行的な低迷が顕著だ。理由ははっきりしている。作品に原因がある。鬱憤がたまった。それが「RRR」で吹き飛んだ。まさに拍手である。

タイトルとともに出る「インド 1920年」「蜂起と反乱」の文字が、映画のすべてを語る。見たことのないアクション描写の数々、インド映画特有の圧倒的な踊り、民衆の間の分断など、すべて「蜂起と反乱」に集約される。これは何と、革命を描くアクション大作なのである。

3週目でチャート内に滑り込んだ。口コミはきいているようだが、満面の笑みとはならない。先のメイン館のように都心なら満席の回もあり、観客の反応は非常にいい。それが、地方になると少し様子が変わる。インド映画のファンが、まだ限られているのだ。インド映画のさらなるファンの掘り起こしを、真剣に考える時期が来たと思う。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

【関連記事】
・この1本:「わたしのお母さん」 機微を柔らかに厳しく
・「土を喰らう十二ヵ月」
・「あちらにいる鬼」
・特選掘り出し!:「ザ・ビースト」 ひっくり返る善悪の図式

RRR

舞台は1920年、英国植民地時代のインド。英国軍にさらわれた幼い少女を救うため、立ち上がるビーム(N.T.ラーマ・ラオJr.)。
大義のため英国政府の警察となるラーマ(ラーム・チャラン)。熱い思いを胸に秘めた男たちが”運命”に導かれて出会い、唯一無二の親友となる。しかし、ある事件をきっかけに、それぞれの”宿命”に切り裂かれる2人はやがて究極の選択を迫られることに。

©2021 DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED.

ライター
ひとしねま

大高宏雄

おおたか・ひろお 映画ジャーナリスト。日本映画プロフェッショナル大賞(日プロ大賞 @nichipro_award)主宰。キネマ旬報で「大高宏雄のファイト・シネクラブ」(2012年度読者賞受賞)、毎日新聞で「チャートの裏側」などを連載。

新着記事