女優助演賞を受賞した伊東蒼=丸山博撮影

女優助演賞を受賞した伊東蒼=丸山博撮影

2023.1.30

「逆立ちしてみて」とっぴな指示に「表現の幅が広がった」 女優助演賞 伊東蒼「さがす」:第77回毎日映画コンクール

毎日映画コンクールは、1年間の優れた映画、活躍した映画人を広く顕彰する映画賞。終戦間もなく始まり、映画界を応援し続けている。第77回の受賞作・者が決まった。

勝田友巳

勝田友巳

5年前、12歳の時に「島々清(かい)しゃ」の好演で、毎日映コン・スポニチグランプリ新人賞を受賞したばかり。その後映画、テレビで確かな演技を見せ、「さがす」で堂々の女優助演賞である。
 


 
〝お父ちゃん〟の佐藤二朗「かっこいい。尊敬してます」

「さがす」で演じたのは、失踪した父親を捜すしっかり者の中学生、楓。地元・大阪が舞台でセリフも大阪弁。「標準語の芝居をやりにくいとは感じていなかったですけど、大阪弁だと、アドリブもポンポン出てくるし、やりやすかった」。佐藤二朗演じる頼りない父親に、威勢のいい言葉を浴びせている。
 
佐藤は持ち味の誇張したアクの強い演技を封印、シリアスに徹している。「でも、撮影の合間はテレビで見たまんまでした」と笑う。「撮影した時は高校進学を控えていたので、進路のこととか、映画やドラマの話をして、本当のお父ちゃんみたいでした」
 
それが、カメラの前に立つとひょう変。「直前までゲームをしたり、人を笑わせたりしていたのに、本番になると『お父ちゃん』に切り替わる。セリフは全部覚えていて、フワッと聞いただけで思い出す。かっこいいなと思って、尊敬します」

 

言われて気付いた「空白」と「全然違う」

2021年に出演した「空白」では、万引きの疑いをかけられて逃げる途中で事故に遭い、騒動の引き金となる中学生を演じ、短い出番で強烈な印象を残した。この時の内気でおどおどした雰囲気とは正反対、今回は別人のよう。振り幅の大きさが選考でも話題となったが、当人は「周りの人に言われて気付きました。全然違うなと」と人ごとのようである。
 
「さがす」は「難しかった」と振り返るが、片山慎三監督の演出も独特だった。「逆立ちしてみて」とか、怒っている場面で「グルグル回って、手を思いっきりかんで」など、予想外の指示を出す。
 
「最初は違和感しかなくて、ロボットみたいな感じだったけど、何度もテークを重ねるうちに体にしみ込んでると感じました。一生懸命やってる間に気付くことがあったし、新しい楓が見えたのが楽しかった」
 

表現のためにいろんな方法を試していい

とっぴな演出も、演技の幅を広げてくれた。「これまでは、気持ちを表現するのに『これぐらいが普通』と決めて、やりやすい動きしかしてなかったのかな。普段はしない動きをしてみたら、役が広がりました。普通でなく表現するために、いろんな方法を試していいと気付いた作品です」
 
演技を始めたのは6歳から。「最初は母が連れて行ってくれて、お芝居が楽しかった。でも、本格的にやりたいと思ったのは『湯を沸かすほどの熱い愛』(16年)と『島々清しゃ』。長く役と向き合って、大変さ以上に、自分じゃない人になれる楽しさを知りました」
 
俳優への思いは変わらないという。「撮影中に毎晩、台本を最初から最後まで読むっていうのは変わってないです。その日に撮影したことを日記みたいに書き込んで、前の撮影とのつながりを意識するようになりました」
 

走るのが毎回速くなっている

「演じているうちにその作品のファンみたいになって、自分の好きな作品の世界で役として動いているのが楽しい。このセリフ、言いそうだなと感じた時とか、いろんな楽しみが発見できてる」
 
現在、高校2年生。学校との両立は大変じゃないですか? 「そんなことないです。学校は楽しい。日本史の項目とか四字熟語とか、授業で習ったことが撮影で出てくるし。学校の行事を、みんなで準備するのも好きです。お芝居は続けたいけど、進学も考え中。知識を増やしたら、いろんな役ができると思う」
 
「いろんなジャンルの物語を読むのが好きで、いただいた話はどんな役でもやってみたい」。映画「人狼ゲーム」シリーズのファン。「全部見てます。ああいうのにも出てみたい」。走るのが苦手だったというが、「さがす」では風のように疾走していた。「『空白』から走る映画ばかりで、毎回速くなってるのを実感しています」。ダンスも長く続けており、アクションもいけそうだ。

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ライター
勝田友巳

勝田友巳

かつた・ともみ ひとシネマ編集長、毎日新聞学芸部専門記者。1965年生まれ。90年毎日新聞入社。学芸部で映画を担当し、毎日新聞で「シネマの週末」「映画のミカタ」、週刊エコノミストで「アートな時間」などを執筆。

カメラマン
ひとしねま

丸山博

毎日新聞写真部カメラマン

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