チャートの裏側

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2025.2.21

チャートの裏側:堂々と描かれた日本

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

日本と日本人が、かなり重要な役回りを果たしているので、妙な緊張感を強いられた。マーベル映画の新作「キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド」だ。緊張感は、ハリウッド娯楽大作における「日本」の描かれ方から来ている。マーベル映画が、日本を堂々と描いたのは極めて珍しい。

今回、二つの点に注目したい。日本の首相と、日本の戦争の関わり方である。首相は平岳大が演じた。その堂々たる風貌、偉丈夫ぶりに目を見はった。ハリソン・フォード演じる米大統領と並んで歩くシーンでは、平のほうが背が高い。気配りにも見え、不思議な感覚があった。

日本は、米国との戦争に巻き込まれる。驚いた。背筋が寒くなった。この発想は、どこから生まれたのか。ひょっとして、ロシアや中国との戦争という設定は、今の世界情勢から見て、刺激があり過ぎたか。日本なら無難だったか。絵空事が際立つから、批判はやってこない。

これまで、米映画、なかでも娯楽大作において描かれる「日本」には、どうにも歯がゆさがあったものだ。今回はいささか違う。日米開戦寸前という設定が、絵空事の感じがしなかった。トランプ政権後を踏まえると、本作に現在の世界情勢を、何層にもひっくり返すような意図さえ透けて見える。政治、社会情勢を織り込む場合も多い米娯楽大作の真骨頂全開である。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)


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