パリで父親（アルノー・ルボチーニ）と暮らすクレオ（ルイーズ・モーロワ・パンザニ）は、長い時間をともに過ごしている乳母のグロリア（イルサ・モレノ・ゼーゴ）のことが大好きな６歳の女の子。ある日、家族の事情によって、グロリアは故郷であるアフリカの島国、カーボベルデへと帰ってしまう。夏休み、クレオは彼女に会うために、ひとりで異国へと旅立つ。

新鋭監督、マリー・アマシュケリが自身の体験を基にして生み出した物語だという。いつも自分を温かく包み込んでくれた乳母を慕うクレオの思いとまなざしには混じり気がなく、グロリアの孫である赤ん坊にむき出しの嫉妬心を向けてしまうこともある。監督は愛らしさも危なっかしさもすべてを見逃すまいとするかのように、近い距離でクレオにカメラを向けた。

何よりも引き込まれるのは、演技初挑戦とは思えぬルイーズの豊かな表情。挿入されるアニメーションもクレオの揺れる心の風景を鮮やかに伝え、愛と別れを知っていくひと夏の冒険物語を忘れがたいものにしている。1時間23分。東京・ヒューマントラストシネマ有楽町、大阪・テアトル梅田ほか。（細）

ここに注目

クレオはじめどの人物の表情も豊か。アップを多用したカメラが感情の起伏を繊細に映し撮った。アマシュケリ監督は子供の視点と鼓動が伝わるような演出を貫き、幼少期の思いをシンプルかつ丁寧にすくい上げた。まぶしい陽光や海辺のきらめきが、内面の成長を祝福するかのように光り輝いている。（鈴）