「本日公休」

「本日公休」 ©2023 Bole Film Co., Ltd. ASOBI Production Co., Ltd. All Rights Reserved

2024.9.20

「本日公休」 損得ではないまっすぐな生き方

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

40年にわたり、台湾・台中で昔ながらの小さな理髪店を営んでいるアールイ(ルー・シャオフェン)。女手ひとつで育てた3人の子供たちが巣立ってからも、店に立ち続けていた。ある日、離れた町から通っていた常連客が病にふせっていることを知り、古い愛車を走らせる。

フー・ティエンユー監督が母親をモデルに脚本を書き、台中にある実家の理髪店で撮影した人間ドラマ。アン・ホイ監督の「客途秋恨」などで知られる名優、シャオフェンが脚本にほれ込み、24年ぶりにスクリーンに復帰している。ちょっぴり頑固だが丁寧で誠実な仕事で常連たちに信頼されている母と、合理的なところのある現代っ子な子供たち。監督は異なる価値観を描きながらも郷愁に溺れることなく、母のまっすぐな生き方や老いとの向き合い方を見つめた。アールイと同じように損得ではなく人のために動いてしまう次女の元夫(フー・モンボー)との交流が、じんわりと心に染みる。理髪店での日常を飛び出し、田舎の道で車を走らせる〝冒険〟も描かれ、途中で出会う印象的な青年をチェン・ボーリンが演じている。1時間46分。東京・新宿武蔵野館、大阪・テアトル梅田ほか。(細)

ここに注目

どれほどオンライン化、ネットワーク化が進もうと、散髪は触れ合わないとできないし、AIでは代行不能な職業の一つだろう。触れ合えば会話のきっかけとなり、情が生まれる。人肌の感覚を上手に生かした、懐かしい雰囲気の人情話。ホッと一息つける小品。(勝)

関連記事

この記事の写真を見る

  • 「本日公休」
さらに写真を見る(合計1枚)