「神は銃弾」

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2024.12.27

特選掘り出し!:「神は銃弾」 容赦ない痛みや醜さの先に

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

アメリカ人作家ボストン・テランが1999年に発表したノワール小説の映画化である。クリスマスの夜、刑事ボブ(ニコライ・コスター・ワルドー)の元妻とその夫が殺され、10代の娘が誘拐された。娘の奪還を誓ったボブは、悪魔崇拝カルトの一味を追跡する。

本作の特徴は二つの〝過剰さ〟。まずバイオレンス描写のすさまじさだ。犯人のカルト集団は血も涙もなく、殺戮(さつりく)を楽しむかのように凶行を繰り返す。一方、敬虔(けいけん)なクリスチャンのボブは模範的人物だ。しかし何が何でも娘を救いたい彼は、捜索の過程で血生臭い暴力に手を染め、法治の限界を悟る。
 
ボブに協力する若い女性ケース(マイカ・モンロー)のキャラクターも興味深い。カルト集団の元信者で、心身共に傷ついた彼女は、ボブとは別の理由で一味との闘いに身を投じていく。これは何もかも対照的な世界で生きてきた男女のバディームービーでもある。

もう一つの〝過剰さ〟は2時間36分という長さだ。ジャンル映画としては明らかに長すぎるが、人間の痛みや醜さを容赦なく描き、最後にかすかな純粋さをあぶり出す魂の旅路として見応えがある。暴力描写に耐性がない人にはお勧めできないが。ニック・カサベテス監督。東京・新宿バルト9、大阪・T・ジョイ梅田ほか。(諭)

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