「2度目のはなればなれ」

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2024.10.11

「2度目のはなればなれ」 生きてきた人生の深みが宿る名優ふたりの演技

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

バーナード(マイケル・ケイン)とレネ(グレンダ・ジャクソン)はイギリスの老人ホームで暮らす夫婦。ある日、バーナードがホームを抜け出して仏ノルマンディーへ向かうと、彼が行方不明だと伝えた警察のSNSが拡散され大ニュースになる。

2014年、89歳の退役軍人がノルマンディー上陸作戦70年記念式典に参加するため、老人ホームを脱出したという実話を映画化。時がたっても、戦地で死に直面した記憶がフラッシュバックして、傷は癒えることがない。バーナードだけではなく、式典で出会った者たちもそれぞれに痛みを抱えている。ドイツの退役軍人と交流するシーンも描かれた戦争映画であり、過去と向き合うために一歩ずつ進む夫と、ホームのベッドで夫を思う妻の姿を描いた愛の映画でもある。時間と記憶に関する映画と言えるかもしれない。涙腺を刺激しながらも軽やかな印象が残るのは、名優ふたりのちゃめっ気があるからこそだろう。

ケインの引退作であり、ジャクソンの遺作。オリバー・パーカー監督。1時間36分。東京・TOHOシネマズシャンテ、大阪ステーションシティシネマほか。(細)

ここに注目

許しの旅に出るバーナードの気骨と潔さ、ユーモアと濃密な愛に導かれたレネのりりしさ。しわの一つ一つ、おぼつかない歩く姿にも生きてきた人生の深みが宿る。軽やかな会話と信頼で結ばれた老夫婦はかっこよすぎるほどだ。戦争を懐古せず、トラウマなどの現実を見据えるスタンスもすばらしい。(鈴)

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