毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
「ロングレッグス」© MMXXIII C2 Motion Picture Group, LLC. All Rights Reserved.
2025.3.14
特選掘り出し!:「ロングレッグス」 とてつもない緊迫感
A24などのアメリカの独立系映画会社が、積極的にホラーに参入し始めたのは2010年代半ばのこと。それ以来「ウィッチ」「ミッドサマー」などの独創的な作品が、このジャンルを活気づけてきた。「サイコ」の主演俳優アンソニー・パーキンスの息子オズグッド・パーキンスが監督を務めた本作も、その流れをくむ一作だ。
1990年代半ばのオレゴン州。FBIの新人捜査官リー・ハーカー(マイカ・モンロー)が並外れた直感力を買われ、ある未解決事件の担当に抜てきされる。それは過去30年で10の家族が殺害されながらも、現場に侵入者の痕跡がなく、難解な暗号文が残されているという謎だらけの事件だった。
序盤に提示されるこの設定からしてすごいが、暗号文の差出人で、犯人と目される怪人ロングレッグス(ニコラス・ケイジ)が現れる中盤以降は、さらなる驚きの連続。等身大の少女人形、オカルト的なシンボル、14日の誕生日など断片的な手がかりがちりばめられ、主人公が呪われた真実に直面するクライマックスになだれ込む。
空間的な余白を設けたカメラアングル、静寂を重んじた音響も秀逸。何も起こらない場面にまでとてつもない緊迫感がみなぎる。近年最高の恐怖映画だ。1時間41分。東京・新宿ピカデリー、大阪・なんばパークスシネマほか。(諭)