「ルックバック」 © 藤本タツキ/集英社 © 2024「ルックバック」製作委員会

「ルックバック」 © 藤本タツキ/集英社 © 2024「ルックバック」製作委員会

2024.6.28

特選掘り出し!:「ルックバック」 ファンタジー調仕掛けが新鮮

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

小学4年の藤野(声・河合優実)は学年新聞で4コマ漫画を連載し、絵のうまさを自認していたが、隣のクラスの不登校児、京本(声・吉田美月喜)の絵に衝撃を受け、断筆してしまう。ところが藤野と会った京本は「大ファン」と熱烈に訴えた。2人が共作した漫画は公募コンテストで入選。やがて連載の話が持ち込まれるものの、京本は美大に進学してコンビは解消。数年後、人気漫画家となった藤野は、京本が事件に巻き込まれたと報じるニュースを見る。

「チェンソーマン」の藤本タツキのマンガを、ジブリアニメを支えた押山清高監督がアニメ化。絵の才能に恵まれた2人の少女の10年に及ぶ運命を描く。同じ構図のまま色や細部を変えて時間の経過を表したり、誇張したフォルムで登場人物の心境を映像化したりと、原作の工夫とアニメならではの技法を組み合わせて、互いに磨き合い成長する2人の高揚感と多幸感、かけがえのない相棒を失った喪失感を生き生きと描出した。

時間をさかのぼって〝もしも……〟を示したファンタジー調の仕掛けも新鮮で、友情の尊さと別れの切なさが染み入ってくる。原作マンガに劣らぬ佳作となった。58分の尺も好適。東京・TOHOシネマズ日本橋、大阪・T・ジョイ梅田ほか。(勝)

関連記事

新着記事