「スオミの話をしよう」

「スオミの話をしよう」 ©2024「スオミの話をしよう」製作委員会

2024.9.13

「スオミの話をしよう」 サービス満点のザッツ・エンターテインメント

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

大富豪の詩人、寒川(坂東彌十郎)の妻スオミ(長澤まさみ)が誘拐された。寒川はスオミの5番目の夫で、警察沙汰にしたくないと前夫の刑事、草野(西島秀俊)にひそかに捜査を依頼する。屋敷には庭師の魚山(遠藤憲一)、草野の上司、宇賀神(小林隆)、ユーチューバーの十勝(松坂桃李)と、スオミの元夫たちが集まってくる。5人の男たちが語るスオミはまるで別人だった……。

三谷幸喜脚本・監督による9作目のコメディー映画。スオミの真の姿と誘拐事件の真相を巡って展開する物語の大半は、寒川邸の居間での会話劇。大きなセットを俳優たちが縦横に歩き、丁々発止のやりとりが飛び交う。設定は舞台劇のようだが、カメラが俳優と共に動き回るのは映画ならでは。五つの顔を演じ分ける長澤はじめ、彼女に振り回される男たちやその周囲の人物まで、芸達者がずらり。爆発的な笑いには至らずとも、ミステリー風味ありアクションありとサービス満点だ。もっとも一番楽しそうなのは、三谷演出の下で水を得た魚のような俳優陣かも。1時間54分。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(勝)

ここに注目

スオミ救出に一丸となって奔走する集団劇の設定は、三谷喜劇の真骨頂。5人の男たちの思いが笑いの源泉となり、キャラクター設定や彼らの登場理由など理詰めで違和感なし。ドタバタも、スオミの秘密も(いい意味で)ほどほど加減のバランス。ラストもにんまりのザッツ・エンターテインメント。(鈴)

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