「シンパシー・フォー・ザ・デビル」

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2025.2.28

「シンパシー・フォー・ザ・デビル」 ニコラス・ケイジが謎のカージャッカーを怪演

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

ある夜、会社員デイビッド(ジョエル・キナマン)が、妻が産気づいた病院に駆けつける。ところが駐車場で赤い髪の男(ニコラス・ケイジ)に拳銃を突きつけられ、脅迫されてしまう。やむなくデイビッドは命令に従い、ラスベガス郊外へ車を走らせる。素性も理由も明かさない男の真意は何なのか……。

登場人物はほぼ2人だけで、悪夢のような一夜のドライブの行く末を描くスリラー映画である。トム・クルーズ主演の「コラテラル」を想起させるシンプルな設定だが、物語が佳境に差しかかると両者の間に深い因縁があるらしいことがわかってくる。パンクロッカーふうの強烈な風貌で謎のカージャッカーにふんしたケイジが、突如ブチ切れて荒れ狂うわ、ダイナーで歌って踊るわの怪演を披露。だが、それだけが見どころではない。走行中の車内シーンを含めた映像設計が優れており、夜の闇に極彩色のネオンサインが妖しくきらめくショットの数々が魅惑的だ。往年のプログラムピクチャーのような1時間30分という長さも好ましい。ユバル・アドラー監督。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(諭)

ここに注目

正体不明の敵意にさらされるという設定はホラーやスリラーの王道だ。本作も終盤近くまで、振り切ったケイジの激怒っぷりが恐ろしい。しかし、ギアが切り替わると大きく転調。観客がほとんど放り出されそうになるのをつなぎ留めたのは、演技派の方のケイジ。脱帽。(勝)

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