「ロイヤルホテル」

「ロイヤルホテル」 © 2022 Hanna and Liv Holdings Pty. Ltd., Screen Australia, and Create NSW

2024.8.02

「ロイヤルホテル」 リアルに描出された男性社会の異様さ

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

ハンナ(ジュリア・ガーナー)とリブ(ジェシカ・ヘンウィック)の親友2人は、旅先のオーストラリアでお金に困り、ワーキングホリデーの事務所に駆け込む。紹介されたのは砂漠の炭鉱町にあるパブ「ロイヤルホテル」。住み込みのアルバイトを始めるが、店長や客のパワハラやセクハラ、女性差別は日常茶飯事。リブは環境を受け入れるが、ハンナは不安が募り精神的に追い込まれていく。

「アシスタント」のキティ・グリーン監督とガーナーが再び組み、実在するパブでの実話を基に映画化。女性蔑視の現状と男性社会の異様さを女性目線でリアルに描出した。逃げ場のない恐怖と絶望感をスリリングに写し取る一方で、酔客らの横暴を大事件の起こる一歩手前で回避させ、不穏さをエスカレートさせていく。2人の女性には、男性文化を許容してとどまるか、拒否して立ち去るかの選択しかない。ラストの2人の行動は物語にカタルシスを与えるとともに、グリーン監督の強烈なメッセージと受け止めたい。1時間31分。東京・新宿武蔵野館、大阪・テアトル梅田ほかで公開中。全国でも順次公開。(鈴)

ここに注目

男性の力と常識が支配する酒場のセクハラ、パワハラ、それにアルハラを、それらを気にしないリブと嫌悪するハンナの差を通して対象化する筆致が見事。自由を求めて旅に出た2人が、女性であるという〝不自由さ〟にとらわれる理不尽さが、怒りとともに浮き彫りになっていく。(勝)

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