私と映画館

私と映画館

2024.9.27

私と映画館:新百合ケ丘のアメリカ

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

小学生の頃、当時住んでいた川崎市の登戸から小田急線ですぐの新百合ケ丘にシネコン「ワーナー・マイカル・シネマズ新百合ケ丘」ができた。それまで映画を見るには、JRで東京・立川か川崎へ行くしかなかったので映画館が一気に身近になった。アメリカナイズされた雰囲気にやられた。あの「WB」のロゴがドーンと掲げられ、バッグス・バニーがそこらにいる。劇場に入るだけで胸がときめいた。「ここはアメリカだ」と思った。

私の父は、漫画「巨人の星」に出てくる星一徹のように厳しかったが、映画館には連れていってくれた。「アルマゲドン」(1998年)、「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」(99年)、「ラブ・オブ・ザ・ゲーム」(同)――。正直、あまり好みではなかったが、「面白かったか」と聞かれると、毎回「うん」と答えていた。それにしても、まさか「アルマゲドン」で父の涙を見ることになるとは……。

93年に日本に上陸したシネコンが、破竹の勢いで数を増やしていたさなか。「ミニシアター」の存在を知るのはずっと後で、ここが私の映画館の原体験だ。時は流れ、同劇場は今、「イオンシネマ新百合ケ丘」となっている。面白い映画はあったのか? 高倉健主演の「鉄道員(ぽっぽや)」(99年)には心打たれた。これは友達と行った。ちっとも「アメリカ」ではないのだが。【井上知大】

関連記事

この記事の写真を見る

  • 私と映画館
さらに写真を見る(合計1枚)