「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」パート2の一場面 Graphyoda/Netflix © 2023

「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」パート2の一場面 Graphyoda/Netflix © 2023

2023.4.17

復讐のその先にあるものとは―。ソン・ヘギョ主演「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~ パート2」:オンラインの森

いつでもどこでも映画が見られる動画配信サービス。便利だけれど、あまりにも作品数が多すぎて、どれを見たらいいか迷うばかり。目利きの映画ライターが、実り豊かな森の中からお薦めの作品を選びます。案内人は、須永貴子、大野友嘉子、梅山富美子の3人に加え、各ジャンルの精鋭たちが不定期で寄稿します。

大野友嘉子

大野友嘉子

1月のコラムで、「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」について書いた。同級生に暴力をふるわれた主人公ドンウン(ソン・ヘギョ)の過去を中心に描いたパート1からパート2ではドンウンの復讐(ふくしゅう)劇が本格化する。被害者と加害者の狂気がぶつかり合い、血で血を洗う争いの中で、加害側の筆頭格を演じたイム・ジヨンは主役を食う存在感を放っていた。


クライマックスを迎える後編は期待以上の面白さ

期待以上の面白さだった。18年もの間、同級生らへの復讐だけが生きがいだったドンウンは、冷静に、冷徹に、綿密に練った計画を着実に実行していく。表情をほとんど変えずにじわじわと同級生らを追い詰めていく執念は、恐ろしくも痛快だ。

ドンウンの静かな狂気に対し、同級生らの狂気はむき出しだ。子供じみたいさかいを繰り返し、時には公衆の面前で口汚くののしり合い、平気な顔をして裏切り、悪事に手を染める。「こんなクズ、いる?」と思わず首をかしげたくなる、ややオーバーな描き方だが、そこは勢いのある演出と俳優陣の鬼気迫る演技がカバーしている。


いじめグループの主犯格を演じたイム・ジヨンのすさまじい演技

パート2のMVPは、イム・ジヨンだろう。ドンウンの元同級生で、いじめの5人グループの主犯格、ヨンジンを演じた。

ヨンジンは裕福な家庭に育ち、美貌とセンスを兼ね備え、高校時代から華やかで目立つ存在だった。気象キャスターとしてテレビで活躍し、リッチで優しく、ハンサムな夫ドヨン(チョン・ソンイル)との間には、可愛い娘イェソルがいる。

いわゆる「リア充」なのだが、もちろん、現実は甘くない。頼りにしている(悪事を隠蔽=いんぺい=してくれる)母親は長年にわたって巫女(みこ)に入れ込んでいるし、華やかに見えるキャリアは若手の台頭でがけっぷち。何より、夫に対して大きな秘密を抱えていた。それは、イェソルが色覚障害であるということだ。

実は、イェソルは夫の子ではなく、いじめグループの一人、ジェジュン(パク・ソンフン)との間にできた子。ジェジュンもまた、色覚障害だった。ヨンジンは、イェソルと実の父親を結びつけ色覚障害をドヨンから隠そうと躍起になり、いつも気が張り詰め、心を落ち着けないでいた。

そんなヨンジンの前に、18年ぶりにドンウンが現れた。私生活を調べ上げられ、夫と娘に接近される。高校時代の悪事や、娘の秘密をバラされるのではないかと焦るヨンジン。勝ち気な性格が災いしドンウンの挑発に乗り、応酬する。

もともと屈折した性格で、頭のネジが何本か外れたようなヨンジンだが、ドンウンに追いめられ、更におかしくなっていく。片方の口角をつり上げて嘲笑する「顔芸」や、けたたましい笑い声、高級バッグをたたきつけて暴れる姿……。破滅に向かうヨンジンのすさまじい心の描写を、イム・ジヨンは見事に演じた。

見どころが満載、ラストまで気を抜けない

ドンウンの最大の復讐は、ヨンジンから母親を奪うことだった。18年前、ヨンジンと母親の差し金で、自らの母親に裏切られた経験があるからだ。ドンウンは狙い通り、ヨンジンの母親に、娘を裏切らせることに成功する。さすがのヨンジンも、この時ばかりは子どものようないたいけな表情で、泣いて母親にすがる。

ラストまで見どころが満載だ。ヨンジンは刑務所に入る。監房で、ボスに「プリティー、明日の天気は?」と尋ねられ、ヨンジンは即座にスタンバイする。笑顔の「天気予報」が突如、始まる。ゾッとする場面だ。好演を通り越し、もはや怪演である。

ちなみに予報は「晴れて空気もきれい」。どん底から、明るい未来を夢見るヨンジンの願望だろうか。

このドラマに希望があるとしたら、ドヨンとイェソルだろう。ドヨンは、イェソルが自分の子ではないと知ることになるが、娘の幸せのために最善を尽くし、変わらずに愛し続ける。

実の親に捨てられたドンウンとヨンジンに対し、血縁がなくても親子の愛情があるドヨンと娘。皮肉な構図のように見えるが、人と人のつながりは「生まれ」をえることもあるのだと示唆しているのかもしれない。

「ザ・グローリー2」はNetflixで配信中


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ライター
大野友嘉子

大野友嘉子

おおの・ゆかこ 毎日新聞くらし科学環境部記者。2009年に入社し、津支局や中部報道センターなどを経て現職。へそ曲がりな性格だと言われるが、「愛の不時着」とBTSにハマる。尊敬する人は太田光とキング牧師。ツイッター(@yukako_ohno)でたまにつぶやいている。
 

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