2023年も、たくさんの映画や配信作品が公開されました。とても見切れなかった!とうれしい悲鳴も聞こえてきそうです。「ひとシネマ」執筆陣が今年の10本と、来る24年の期待作3本を選びました。年末年始の鑑賞ガイドとしてもご利用ください。
2023.12.24
やっと戻った日常 心の琴線に触れた10本 後藤恵子
ゆく年編
「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」(マリア・シュラーダー監督)
「逆転のトライアングル」(リューベン・オストルンド監督)
「イニシェリン島の精霊」(マーティン・マクドナー監督)
「モリコーネ 映画が恋した音楽家」(ジュゼッペ・トルナトーレ監督)
「フェイブルマンズ」(スティーブン・スピルバーグ監督)
「BLUE GIANT」(立川譲監督)
「私がやりました」(フランソワ・オゾン監督)
「名探偵ポアロ ベネチアの亡霊」(ケネス・ブラナー監督)
「トークサバイバー2」(佐久間宣行プロデューサー)
「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」(ポール・キング監督)
ハリウッドの闇の深さも
コロナ禍から3年、少しずつ日常が戻っていく中、今年は何かしら心の琴線に触れた作品を選びました(鑑賞した日時順です)。
「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」はハリウッドで実際に起こったことをベースに描いた。闇の深さを感じるとともに、このような事が起こらないのを切に祈るばかり。「私がやりました」はさらりと男女の待遇差の描写を交ぜ込み、テイストは違えど「SHE SAID」に通じるテーマを内包している。
上映時間を107分だと勘違いしていた(実際は147分)「逆転のトライアングル」、淡々としたストーリー展開の「イニシェリン島の精霊」は最後まで見せきる演出のすごさに脱帽。アガサ・クリスティのファンとしては不安もあった「名探偵ポアロ ベネチアの亡霊」は舞台や設定を大幅に変更して、ファンを迷路にいざなった脚色に白旗を。
「モリコーネ 映画が恋した音楽家」では音楽を起点にタイトルを思い出す事象が発生、「BLUE GIANT」はライブシーンの迫力にリズムを取り出し、「フェイブルマンズ」ではこの出来事があの映画に反映されるのだと膝を打った。
このくくりでいいのかと思いつつ、Netflixの「トークサバイバー2」も挙げておきたい。時には笑いをこらえながら演じ切る役者さんのドラマパートと対比する、お笑いパートでの実力ある芸人の方々の間の取り方、抑揚の付け方は演技に通じるものがあった。芸人の方々が映画やドラマに起用される理由の一端を見た。
直近に見た「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」は「チャーリーとチョコレート工場」でジョニー・デップが演じ、強いインパクトを残したウィリー・ウォンカの若き日の物語を、出演作のチョイスがジョニーを思わせるティモシー・シャラメを起用し、ミュージカルテイストに仕上げた。明るい色調に時々ミュージカルで、朗らかに劇場を出た。
2024年も良い年になりますように。
くる年編
「ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人」(マイウェン監督) 2月2日公開
「変な家」(石川淳一監督) 3月15日公開
「悪は存在しない」(濱口竜介監督) 4月26日公開
好きな原作、推しのスター、注目監督
2024年公開の映画でこれは見たい!というものを3本。「変な家」は原作漫画を読んでいて、設定は変わった部分があるものの楽しみだ。「ジャンヌ・デュ・バリー」は単純にジョニー・デップのファンとしては押さえておきたい作品。濱口竜介監督は「ハッピーアワー」から追いかけているので最新作「悪は存在しない」も楽しみです。挙げた3本以外でも興味ひかれるタイトルがたくさんあります。ぜひ劇場へ!
【ひとシネマ的 ゆく年くる年 総まくり2023】
人生の苦難、心の闇……〝痛み〟引きずった作品たち SYO
面白い作品を満喫 悔いなき1年 高橋佑弥
日本映画に感じた「物作り」の力 洪相鉉