この1本:「はい、泳げません」 体に委ねて素直になる
カナヅチの哲学者が、スイミングクラブの美人コーチと出会って人生を見つめ直す。長谷川博己と綾瀬はるかの顔合わせ、楽しそうなラブコメディーかな。と予想させ、そうはいかない。渡辺謙作監督、くせ球でコーナーを突いた。 水恐怖症の雄司(長谷川)が一念発起して水泳教室に通い始め、コーチの静香(綾瀬)に泳ぎを習う。滑り出しはシュールなギャグを配して、漫画調のコメディー風。雄司は静香の手ほどきを受けて、体の使い方、呼吸の仕方を体得し、みるみる泳ぎを覚えてゆく。スポーツとノウハウ映画の趣も加わり、軽快に進む。 ところが雄司には、幼い息子を亡くした過去がある。その心の傷は深く、普段は奥底にしまい込んでいるもの...